いちにち
眠気が来なかった。もう外は明るくなって寝る気も失せたので散歩をすることにした。毎回、新しい道を歩いている。駅を通り過ぎて、緑のあるほうに体が向かうことが多い。そのまま電車に乗る日もある。二時間ほど歩いたとき、もう眠かったけれど電車に乗った。いろんな人が、いろんなもののために電車に乗っている。会社に行く人、学校に行く人、本を読んでいる人、明後日の方向を見てる人、外を眺めてる人。靴の色、目の形、表情、姿勢、オーラ、イメージ。適当なところで降りてみる。ちょっと歩いてまた電車に乗る。独り言をしたり、音楽を聴いたり、商店街を歩いたりした。夕方になった。
部屋に戻って、ものすごく疲れてることに気づいたのでベッドに入った。その時に頭の中で絵本が出てきた。昔読んだ絵本が、ふわっと出てきて面白かった。「おやすみ みみずく」とか「おやすみなさい おつきさま」とかもふわふわっと出てきたけれど、思い出して「わ!」となったのはこの絵本。
僕はこの絵本が大好きでマミーに何度も読ませてもらっていたことを思い出した。
ラチは世界で一番弱虫で、犬も人も暗闇も怖くて近づけない男の子。らいおんと一緒にいれば怖くないからと、犬の横を、暗闇を通ることができた。のっぽからボールを取り返すこともできた。らいおんにお礼を言おうとしたら、そこにらいおんはいなかった。ラチはひとりでも強かった!
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