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「見守り隊」の絶大なる効果

犯罪心理学が専門の出口保行氏によると、小中学生の登下校時に地域の人が旗を持って立って安全に配慮してくださる、いわゆる「見守り隊」は、犯罪を未然に防止するために絶大なる効果があるそうです。
以下、山口氏の講演(兵庫大学エクステンション・カレッジ講座「確証バイアスという罠」2024年10月5日)で聞いた話です。

「見守り隊」の効果と言えば、まず思い浮かぶのは、交通事故や不審者から子どもを守ることでしょう。
例えば、下校中の小学生に不審な人が近づいてきたとしても「見守り隊」の人がすぐさま制止することができますし、道路の真ん中を歩いている子がいたら「危ないからもっと端っこを通りなさいよ」と注意することもできます。
 
しかし、実は効果はそれだけではないのです。

山口氏によると、この活動は加害者目線から見ると最も嫌な活動なのだそうです。
つまり、「見守り隊」の人が毎日同じ場所に立っている地域は、どこで誰に見られているかわからないという気にさせるからです。
私たちは、幼い子どもが被害を受ける事件は夕方5時ごろ以降の暗くなってからが最も危ないというイメージを持っていますが、実際は下校時が最も多いのだそうです。

その下校時に多くの目で子どもを見守っている、その事実だけで犯罪者は「この地区の子には手が出せない」と思うのです。

私たちが、被害者目線だけでなく犯罪者目線を知ることで新たな発見が生まれ、活動の意義を深く理解することができます。仮に被害者目線だけで考える――つまり、子どもの視点からだけで考える――と、ほとんど事件の起きない地域では「毎日立っているだけで、こんなもの効果があるのだろうか」とか「やってもやらなくても、事件なんか起こらないだろう」と感じて、規模を縮小したり、取りやめたりしてしまうこともあるそうです。
山口氏は、これが一番危険だと指摘します。

実際、いくつかの重大事件が「見守り隊」のいない地域で起こっているそうです。

また、普段の挨拶にも大きな抑止効果があるといいます。
見知らぬ人にでも挨拶をする人が多い地域では、犯罪が起こりにくいそうです。犯罪者にとって挨拶をされることは「見られた」ということであり、この後犯行に及んだとき、今挨拶をした人が自分の顔を覚えていて、警察で証言するかもしれない、と思って犯行をとりやめるのだそうです。
挨拶をした方は顔などほとんど覚えていないでしょうが、犯罪者からすると大きなリスクになるわけです。

ちなみに山口氏は、地下鉄サリン事件など社会を震撼させた重大事件の犯人をはじめ少なくとも1万人以上の犯罪から聴取した経験をお持ちの方です。

その山口氏が、講演の最後に「誰にでもできる犯罪防止策として、今日のこの話をぜひ、地域で広めてください」と訴えておられました。

機会があれば、「見守り隊」方にぜひお伝えください。

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