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若い先生を支えるために

昨年の4月、次のような記事がネットニュースに流れました。

都教育委員会は24日、昨年度の新規採用教員のうち1年以内に離職した教員の割合が4.9%に上ったと明らかにした。3年連続の増加で、記録の残る2014年度以降で最も高くなった。都教委によると、昨年度小中高などの教員として採用されたのは3472人で、うち169人が1年以内に辞めた。前年度の離職者は108人で、離職率は0.5ポイント増。教員不足などを受けて採用は1.4倍に増やしたが、離職者が1.6倍に増加した計算だ。

(2024年4月25日付読売新聞オンライン)

40年ほど前、私は新任で初めて学級担任となり学級崩壊を引き起こしましたが、ダメ教師のレッテルを貼られそうな気がして周囲の誰にも伝えることができませんでした。
また、当時は今のように初任者研修の機会も少なく、市教委の研修は学級担任という理由で免除になることもありましたから基本的な研修は、ないに等しい状態でした。

大学を卒業したばかりで右も左もわからない状態だったので、同じ学年団の先生に相談しても「あなたがやりやすいようにやればいいんですよ」と言われて途方に暮れ、毎日が「砂をかむような」苦しい日々でした。

今は県や市町村の教育委員会で実施される初任者研修も充実し、各学校でも若い先生に対する支援体制は確立されていると思います。
それでも冒頭の東京都の例のようなことが全国で起こっています。

先日、こうした事態を少しでも減らすためのヒントとなるレポート、北海道の公立小学校教員で教育支援サークルを主宰する山田洋一氏の「多様な子どもたちを指導する教員の育成」1) に出会いました。

悩んでいる教員に(先輩教員が)できること、それは指導・助言ではありません。特に、同僚である後進にできることは、「共にいること」、そして「共にすること」です。自分(先輩教員)のように指導できる「私以外のだれか」を育て、増やすことではないのです。

 授業づくりネットワーク編(2024)『揃わない前提の授業とクラス』学事出版、86頁
( )内は引用者による

山田氏は他に、「スタンダードとして決められた事項の徹底ができない教員」を、「指導力の低い教員」と見なすことをやめ、経験の多寡にかかわらず、職員同士が同じ仲間、同じ人間として対等の立場で協働することが結果的に若い教員を支えることになると主張します。

また、金沢大学融合研究域融合科学系教授の金間大介氏は、丁寧な調査や聴き取りに基づいて「若者は現役選手しか尊敬しない」傾向があり、「あなた(先輩教師)が今日何をして、明日何をなすのかに興味がある。(中略)過去の実績ではない。」1) と厳しく指摘します。
経験豊富な教員にしかできないことを「指導・助言」されても、若い人がすぐに使えるわけではないというわけです。
若い教員を支えるものは、さまざまな個性が混ざり合って醸し出される「雰囲気」なのです。
そして、そうした雰囲気は経験の少ない教員と経験豊富な先生とが対等の立場で力を合わせ、一緒に学校を作っていくことによって生まれるのだと思います。

「教室には、職員室と同じ風が吹く」と言われます。
若い先生が育つ職員室の風は、子どもたちのいる教室にも温かく流れていくのです。

1) 金間大介(2023)『先生、どうか皆の前でほめないでください いい子症候群の若者たち』東洋経済新報社、226頁( )内は引用者による。

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