第69話 エイトウーマン写真展2023⑪〜七海ティナ、天国るる。初代エイトウーマンを築いた女優たち〜
11日目
”もう11日目。あと2日で終わるのか・・・”
なんだか少し信じられなかった。まだ終わってほしくない寂しい気持ちと、ゴールが見えてきてホッとする気持ちの両方があった。
エイトウーマンキービジュアルを制作してくれた『小林柚月さん』
「あそこの綺麗な人、エイトウーマンポスターのキービジュアルを作ってくれた人やで。小林柚月さん」
社長がそう紹介してくれた。会場に入ってこられる時、”女優さんかな”と思った人だった。
「藤かんながTwitter炎上してた時、ちょうど彼女と打ち合わせしててん。だから炎上した子やって知ってくれてるで」
第一印象が”炎上”とは、いいのか悪いのか・・・。
私は小林さんに挨拶をした。
「初めまして藤かんなです。炎上女優です」
小林さんは鈴を転がしたように笑った。声まで綺麗な人だった。
幻想的なエイトウーマンを作ってくれてありがとうございました。
綺麗に上と下を繋げてくれてありがとうございました!
『ワープエンターテイメント社長』が来てくれた
全身から生命力をみなぎらせた男性が、エイトマン社長と話をしていた。しばらくしてその男性が会場を後にしようとしたその時、
「note見てます!」
とても覇気のある声で私に一言かけてくれた。ブワッと風が吹いたようだった。
その方は『ワープエンターテイメント社長』だった。
「これ、日本一美味しいエッグタルト!みんなで食べてください!」
社長ってみんな語尾にびっくりマークがつくのかな。とても気持ちの良い方だった。
『つばさ舞さんの弟』が姉の勇姿を見に来てくれた
「弟に写真展に来てほしいって言ってるねんけどな、『姉ちゃんの裸なんてどんな顔で見たらええねん』って嫌がるねん。これから先、両親はきっと先に死んでしまうけど、弟は一緒に生きていく存在やから、私の仕事のことも知ってほしいねんな。だから写真展も来てほしい」
つばさ舞ちゃんはずっとそう言っていた。そしてなんとか弟を説得し、写真展に来てくれることになったのだ。
「舞ちゃんの弟さん、何か言ってましたか?」
舞ちゃんと弟さんが帰った後、2人の様子を見ていた山中さんに聞いた。
「あんまりなんも言ってなかったけど、『お姉ちゃん、頑張ってるねんな』って聞こえたな。きょうだい間でそう言えるってよっぽどやと思うよ。そんなこと照れ臭くてなかなか言えないと思うねんなぁ・・・」
「頑張ってるねんな」ってちょっと上から目線だなと思ったが、山中さんの言う通り、本当のきょうだいだからこそ「頑張ってるねんな」なのかもしれない。
舞ちゃんが弟さんと帰って行く時の笑顔は、とてもスッキリしていた。
吉高寧々さんと漫画家の『岡藤真依さん』
この日在廊の吉高寧々さんが『岡藤真依さん』と話していた。岡藤さんはエイトウーマンの漫画「WOMAN」を書いてくれた漫画家である。
岡藤さんとエイトマンを繋げてくれたのは寧々ちゃんなのだ。
寧々ちゃんは本屋さんで岡藤さんのデビュー作に出会い、一目惚れして、一気にファンになった。そしてサイン会に行き、岡藤さんの作品への熱い思い、自分がAV女優であることなどを伝えた。
そして自分がAV女優になりたての頃、不安を払拭してくれたお守りのような作品だということも。
寧々ちゃんの熱い思いを受けとった岡藤さんは泣いてしまったらしい。
「彼女が特定のものに対して熱くなるのってあまり見たことないんですよ。僕が知る中でも、ホリエモンと岡藤さんに対してだけですね」
社長が言った。
寧々ちゃんはホリエモンの著書の「小利口になるな、バカになれ」という言葉に感化され、AV女優になる決心をしたそうだ。
「AV女優になる決意をさせたのがホリエモンで、AV女優への不安を払拭したのが岡藤さんですね」
寧々ちゃんと岡藤さんは楽しそうに笑っていた。
初代エイトウーマンたちと初めてのラブレターの匂い
『吉高寧々さん』『鷲尾めいさん』『七海ティナさん』『天国るるさん』が一堂に集まった。初代エイトウーマンを築き上げた人たちだ。
会場はこれまで見たこともないくらいの大盛況だった。葵つかささんが在廊する時とは少し種類の違う大盛況ぶり。それぞれの女優のファンが、それぞれ毛色の違う熱気を発していて、会場は5度ほど室温が上がっていた。
各女優さんがサインだ、イベントだとバタバタしている中、私は『七海ティナさん』に写真展に来てどんな気持ちかを聞いた。
「来るまでは緊張してました。でも懐かしい人たちやファンに会えて緊張が薄れました。
エイトウーマンから外れて、正直悔しい気持ちはありますよ。1回目のエイトウーマンの直後、体調崩して2年間活動できなかったし、その間言い訳ばっかりしてる自分が情けなく思ってた。
でも今、活動再開し始めることができて、やるぞーと思ってます。エイトマンに恩返しもしたいし」
ティナさんのパワーアップした胸とお尻。ビヨンセのようだった。
・・・・・・・・・・
会場の真ん中に人だかりができていた。『天国るるさん』がファンにサインをしていた。
「あれ、どんなサインだったけ。久しぶりすぎて忘れちゃった」
るるさんは持ち前のふんわりした雰囲気で、ファンたちを笑顔にしていた。
「サインの下にタコ書いとくねー」
「そのタコ、るるさんのメインキャラとかですか?」
私は思わずツッコんでしまった。
「え、違うよ。なんとなく書きたかっただけ」
ファンの皆さんはますます笑顔になっていた。
初代エイトウーマンも強者揃いである・・・。
・・・・・・・・・・
「なんかいい匂いするね、なんの香水?」
控室で西田さんが『鷲尾めいさん』に聞いていた。
「今日はこれやで」
めいめいが香水の瓶を差し出した。私は神乳イイ女の香りを授かりたく、めいめいの香水をつけさせてもらった。
「やっぱりイイ匂いのする女ってイイですか?」
私はクルクル回って香りを振り撒きながら、西田さんに聞いた。
「うん、イイ。匂いは記憶に残るからね。ふとしたところで昔の恋人の香水の匂い嗅いでりとかしてさ、その人とのあれこれを思い出すとかあるよね・・・」
郷愁に浸っている西田さんから話をあまり聞き出せないまま、私は受付に戻った。
豪華女優が4人も在廊するこの日は、レジもてんやわんやだった。
「写真集ください」
「ありがとうございます。お支払いはカードか現金どち・・・え!?」
目の前に立っているお客さまを見て、私は驚きで固まった。
私の小学校の頃の友人が立っていたのだ。
「え!?うそやん!?なんでおんの!?」
「実は1年くらい前から知っててん。元気そうな姿が見れて嬉しいわ」
彼は小学校の卒業前に私に初めてラブレターをくれた男の子だった。こんなこと書いたら彼に怒られるかもしれないが、忘れたくない思い出なので書かせてもらおう。
私は彼が買ってくれた写真集にたくさんサインをした。そして記念に写真を撮らせてもらった。
小学校の冬の下駄箱の匂いを思い出した。