第66話 エイトウーマン写真展2023⑧〜葵つかさが柔らかい笑顔を見せた1日〜
8日目
レモンを持ってない『楓カレンさん』
田中レ・・・いや、『楓カレンさん』が来てくれた。
彼女を見た瞬間、”あれ、なんか透けてる?”と錯覚してしまうほど、透明感があった。エイトウーマンを背景にあどけない笑顔で写真を撮る姿はとても生き生きしていた。
彼女は丸の形を作った両手を胸の前でくっつけたポーズをした。
”あれはなんのポーズだろう。また韓国で流行り始めた新しいポーズかな?・・・いや、『8』だ!きっとエイトマンの『8』だ!”
カレンさんがもしエイトウーマンに入っていたら、どうなっていたかな。
赤い服でない『ですよ。さん』
「あのー、エイトマンの社長さんいますか?」
黒い服を着て、眼鏡をかけた男性がやってきた。その方はお笑い芸人の『ですよ。さん』だった。
”ですよ。さんって、いつも赤い服を着てるよな。その人が黒い服着てる・・・。むっちゃレアやな”
私は心の中でこっそりニヤついていた。
ですよ。さんはずっと「皆さん僕のこと知りませんよね」と言っていた。芸風からのイメージとは違って、控えめな人だった。
ですよ。さん。結構、みんな知ってますよ。
超素敵な笑顔のBEAMS社長『設楽洋さん』
おしゃれな服装の落ち着いた男性が1人で会場を見て回っていた。アパレルメーカー<BEAMS>の社長『設楽洋さん』だった。
”こんな光景も見られるんだな・・・”
私は設楽さんが、エイトウーマン集合写真の前で写真を撮られているのを眺めていた。
写真展開催中、毎日スタッフとして受付に座っている私を「辛くない?」「しんどくない?」と気遣ってくれる人たちはいる。けれど私が座っている受付は『特等席』だ。普段出会えないようないろんな人と出会い、話ができ、たくさんのドラマを見せてもらえる。
結構、いや、かなり愉しい。
設楽さんは、とても素敵ないい笑顔だった。歯が白い!立ち方もかっこいい!
気心の知れた人たちに囲まれ、楽しそうな『葵つかささん』
葵つかささんがデビュー当初専属していたメーカー『アリスJAPAN』の広報の方と、同じくデビュー当初グラビアを一番多く掲載してくれた『週刊FLASH』の編集の方が来てくれた。2人と話している時のつかささんは、とても楽しそうだった。
昔の話をしては「つかさちゃんも大人になったねー」と言う2人。そして「いつまでも子どもちゃうねんでー」と笑っているつかささん。久しぶりの旧友と話しているかのような温かい空気に、見ているこちらも心を温められた。
そのおふたりの後は、現在専属しているメーカー『S1』のプロデューサーが7名も来てくれた。7名も!集団で!そんなことってある!?
7名のうち3名は新人プロデューサーらしく、社長は彼らに「写真展どうやった?」と聞いた。
先陣を切った1人がこう感想を述べた。
「僕、芯が入りました・・・」
ドッカーン!社長を含め他の6名が大爆笑している。私は一瞬なぜみんながそんなに笑っているのか分からなかった。芯が入った彼は右手で股間をさすっている。あぁ、そういうことか・・・。
「お前その発言はどうなの!」
プロデューサー長が笑いを切り替えてピシャリと言った。
「いや。でもそれが素直な感想やんな。それを言えるってすごいね。期待のニューフェイスですね」
社長は感心していた。
「すみません!僕、こういうところあるんです。でもそのくらい感動して興奮しました。美しいだけでなくてエロさもしっかりあって」
芯が入った彼はそう言った。
この時つかささんはファンとのイベントに行っていてこの場にいなかった。彼女にも聞いていてほしかったな。
「それにしてもこの写真展は本当にすごいと思います。芸術性の高さだけでなくて、エイトマンさんの力の大きさも感じます。1回目の写真展で他の女優が後ろ向きで葵つかささんだけが振り返ってる写真がありましたよね。あれを見た時、僕は衝撃を受けました。そんなことができる事務所はいない。僕たちメーカーもそんな恐ろしいことできないです」
プロデューサー長が言った。他のプロデューサーたちも頷いていた。
つかささんだけを振り返らせたエイトマンもすごいが、それをさせた西田さんもすごい。そしてそれを容認できた他のエイトウーマンたちがさらにすごい。
そのくらい『葵つかささん』の存在は群を抜いているのだろう。
イベントを全て終えたつかささんが戻ってきた。気づけばもう閉場時間の20時である。
「何の話してたん?ねえ、みんなで写真撮ろうや」
つかささんと、S1プロデューサーたち(新人プロデューサーの3名は入りきらなかった)。そしてエイトマン社長。なんだかものすごい絵面になった。
彼女は多くの人に支えられている。そんな彼女は多くの人に支えてもらうだけの大きな力を持っている。
”彼女なら世界中で起きている紛争とかを止められるんちゃうか?もし日本で戦争が起きそうになっても止めることができるんちゃうか?”
私は写真を撮りながらそう思った。
「なんか家族写真みたいやな。大家族や」
私が撮った写真を見たつかささんは楽しそうだった。
「あ、エイトウーマンTシャツ着てくださってるんですね」
つかささんがプロデューサー長に言った。
「もちろんですよ。奥先生のイラストいいですよね」
「でもTシャツの下に着てきたんや」
つかささんがズバリとツッコんだ。
「・・・そこは僕の弱さです」
みんな大笑いしていた。
アリスJAPAN、週刊FLASHのおふたり、S1のプロデューサーたち。昔一緒に働いてきた人たち、そして今一緒に働いている人たちに囲まれている彼女は楽しそうだった。いつも以上に柔らかい笑顔でニコニコ笑っていた。
「つかささん、疲れ溜まってませんか?」
S1の皆さん、会場のお客さまたちが帰り、一息ついている彼女に聞いた。
「そうやなー、さすがにちょっと疲れてきたかも。でも私の在廊もあと1回しかないからね。大丈夫!」
たくさんのファンや業界関係者に会い、いつも笑顔で話をして。決して表には出さないが、気疲れしているだろう。人前に立ち続けてきた彼女にとって、気を張ることは慣れたことなのかもしれない。だが慣れていても疲れるものは疲れるはずだ。
この日、少しでも気持ちを緩めることができたかな。そうだったらいいなと思う。
「ありがとう!またよろしく!」
そう言って、つかささんは帰っていった。