第146話 アナタと藤かんなの官能小説⑧〜幻想的な男『S』の再来
僕は藤かんなの写真を買った。2024年12月に開催された『4/8woman写真展』で。そしてようやく届いた額装写真。封を開くと、ひらひらと1枚の紙が落ちた。
目を疑った。男優に採用!?
僕はQRコードを読み取り、出演説明書・承諾書に署名をし、すぐに性病検査へ行った。それからは食事制限、筋トレ、エステにも通い、最高の完璧ボディに仕上げた。
そして迎えた撮影当日。現場は思いの外スタッフが多く、息が浅くなるような緊張感が張り詰めている。
「Sさんは、かんなさんの手コキで発射してもらいます」
スタッフが説明した。
「挿入はしないんですか?」
「しないです」
おいおい、待ってくれよ。僕のボディと股間はこんなに完璧なのに。
そして本番。かんなが僕の股間に触れる。ひんやりと冷たい。上目遣いの彼女と目が合う。たまらない。
でもすぐに脇腹からカメラが割り込んできた。背中をぽんぽんと叩かれ「射精しろ」の指示が入る。色々と気が散る。イかないと、イかないと、でも挿れたい。イ・・・・・・クッ。やっぱり挿れたい!
僕は彼女を無理やり組み敷いて、挿入した。
その瞬間、視界が真っ白になった———
意識が戻る。すごい勢いの水流を感じる。ウォータースライダーを脳天から滑り降りている感覚だ。視界が開ける。無数の白い蛇が、高速にスクリュー回転している。そしてその蛇の先端は楕円型に丸く膨らんでいた。
見たことのある物体。これは精子だ!
そして僕の下半身も猛烈に回転していた。僕は精子になり、卵子へ向かって必死に泳いでいた。
———藤かんなの卵子に1番にたどり着くのは、この俺だ!!!
たくさんのライバルたちを追い抜き、半透明の巨大な球体に飛び込んだ。
風が草木を撫でる音が聞こえる。目を開くと、澄んだ青空が広がっていた。僕は草原に全裸で倒れていた。右手には何故か赤いリンゴを持っている。上半身を起こす。
ここはいったいどこなんだ。
何かの気配を感じ、ふと振り返った。小高い丘の先に髪の長い裸の女が小さく見える。僕は駆け寄る。その女は大切そうに藤の花を持っていた。僕はリンゴを差し出す。彼女はそれを受け取ると、藤の花を僕に差し出した。
「はじまるよ」
彼女はそう言って、僕の股間をぽんぽんと軽く叩いた。
(これはフィクションであり、『4/8woman写真展』での作品購入者への特典企画です)