第68話 エイトウーマン写真展2023⑩〜前進する八蜜凛、知識を増やすつばさ舞〜
10日目
エイトマン社長へのご褒美
「今日、俺が中学生の頃からずっと大好きで尊敬してる〇〇〇〇〇〇〇さんが写真展に来てくれる」
社長が私に言った。
18時ごろ、その人はサラッとやってきてジックリ写真を見て、楽屋に入って社長と15分くらい話して帰っていった。
残念ながら私は受付で忙しく、しっかりお会いすることができなかった。
「中2の時にテレビで〇〇〇〇〇〇〇さんのキャッチコピーを見て衝撃を受けてん。びっくりして感動してん。
人生でそういう衝撃が何度かあった。自分が受けたその衝撃を作り出せる人に憧れた。だから今度は自分がそういう存在になりたいと思って、行動を選択してきたんやと思う。エイトウーマンの活動もその一環。
で、それをやり続けてたら、衝撃と感動を与えてくれた〇〇〇〇〇〇〇さんが、逆に俺の行動に心動かしてくれて・・・なんていうかな。繋がっていってん。ほんと凄いよね。
中2の時に感動を与えてくれたお礼を、直接本人に伝えることが出来るとは想像もしてなかった。これは俺の一つのゴールであって、ご褒美やねん」
そう社長は言っていた。
繋がっていったことの凄さに震えた。その震えはネガティブなものでなくて、胸の高鳴り。
八蜜凛さんの前世占い
『つばさ舞さん』がやってきて、『八蜜凛さん』がやってきた。私はこの日を楽しみにしていた。
メキシコ旅行から帰国したばかりの安定の舞ちゃん。去年の写真展で1位2位を争うくらいインパクトの強かった凛ちゃん。さて、どんなことが起こるだろう・・・。
「かんなちゃんが書いた去年の写真展のnote読んで、私反省してん。もっと人の話聞かなあかんなって。もっと周り見ないといけないなって。だから今日はみんなの前世を考えて、その人が本当に欲しいものを持ってきてん!」
”前世?本当に欲しいもの??”
ツッコミどころしかない凛ちゃんの発言だが、ハラハラワクワクさせられた。そして凛ちゃんはひとりひとりの前世をプレゼンしてくれた。
「かんなちゃんはどんぐりがすごい好きやってん」
「え?リスってこと?」
「ううん、違う。人間。本当にどんぐりが好きやってん。どんぐりの中で過ごしてた」
「・・・・・」
「ほんまにどんぐりが好きで、アートのできるくらい。だからかんなちゃんは今文章書いたり、バレエしたりするんやと思う。で、そんなかんなちゃんが本当に求めてるもの持ってきた」
凛ちゃんはそう言って『天津甘栗』をくれた。
「西田さんはもともと”鋼クズ夫”やってん」
石を集めたりする人らしい。
「だから、西田さんはエベレストに登ったりするんだと思う。そんな西田さんが本当に求めるものを持ってきた」
それは石を削る道具だった。
突拍子もないような凛ちゃんの前世占いだが、あながち的外れではない。
私は小学生低学年の頃、どんぐりを大量に集めたことがあった。それを袋に詰めて保管してたら、大量の虫が湧き出し、今世ではどんぐりがトラウマになっている。
そして西田さんのお父さんは、実は炭鉱夫だった!なので前世が”鋼クズ夫”というのは、西田さんから本当に何かを感じ取ったなのかもしれない。
恐るべし、八蜜凛ちゃん・・・。
ちなみに他のみんなの前世はこうだった。
「社長は住所とかないようなところに住んでる『蜘蛛』。むっちゃ大きい蜘蛛。この蜘蛛はバッタが好きやねんけど、緑のバッタじゃなくて、茶色のバッタが好きやねん。茶色のバッタ見るといつもの3倍くらいの速さで食らいつく。
でも茶色のバッタは用意できなかった。それだけはほんまにごめんなさい」
社長は口半開きで唖然と凛ちゃんを見ている。その目つきが蜘蛛を連想させたんかな・・・笑
「山中さんはサンゴやってん。北センチネル島の近くの食人種の住む島で、漁師をしててん。(さっきサンゴや言うてたけど・・・まあええわ)。その島に近づくと誰一人帰ってこられへんねんけど、山中さんだけは帰ってこれるねん。それで、そこでむっちゃ珍しいサンゴを見つけて『サー!』って言うねん。だから山中さんは福原愛ちゃんより先に『サー!』を言った人やねん」
「舞ちゃんはコンドルで・・・・」
これは全て彼女が頭の中で考えたお話だ。凛ちゃん、小説書けるんちゃうか?彼女の発想力に脱帽。
八蜜凛さんのエイトウーマンに選ばれなかった本音
控室は私と凛ちゃんの2人になった。私は凛ちゃんにぶっ込んだことを聞いてみた。
「凛ちゃん。今年、エイトウーマンから外されたの、正直どんな気持ちやったん?」
泣いてもいいぞ!怒ってもいいぞ!私がそのバイオレンスおっぱいを受け止めよう。
しかし凛ちゃんは冷静だった。
「めっちゃ最低なこと言うと・・・。ホッとしてしまった」
予想外の答えだった。
「その当時、どう頑張っていいかわからなくて、一旦リセットしたいなって思ってた頃やってん。だからホッとした。社長もそれ気づいてたんちゃうかな。だから正しい判断やったと思う。
でも同時に、社長や山中さんは本気で私にぶつかってくれてるなって気づいた。だって、私をエイトウーマンから外したら、私は事務所を辞めるかもしらへんやん?でも甘やかすことなく切った。そのくらい本気でいてくれてるんやって気づいて、私は今まで愚かやったなって思った。だからこれからちゃんとしようって思ってん」
”この日凛ちゃんはどんな気持ちで写真展にくるのだろう”と老婆心ながら心配していた。エイトウーマンから外されて落ち込んでいるのは想像できたし、そこから立ち直るのには時間がかかるのではと思っていた。
しかし彼女は強かった。きっとまだもがいている途中なのだろうが、発言は確実に前を向いていた。きっと気持ちも前を向いていると思う。だって彼女の体はさらにパワーアップした超バイオレンスボディになっていたから。
錦鯉の『渡辺隆さん』が来てくれた
「錦鯉の『渡辺さん』来てくれたから、写真撮らせてもらおう」
舞ちゃんが出演した「マジ歌ライブ2023」で歌っていた渡辺さんだ。
渡辺さん、舞ちゃん、凛ちゃん、私で写真を撮らせてもらい、写真集に3人でサインをさせてもらった。
「ありがとう。今日は来て本当によかったです。写真集、家宝にします」
渡辺さんはとても丁寧な人だった。
つばさ舞さんが戦争を知ろうとする理由
<今日の振り返る会>には舞ちゃんがきてくれた。<メキシコ旅行からのお帰り会>だ。私は舞ちゃんが帰ってきてホッとした。無事元気に帰ってきたことももちろんだが、陸続きの場所にいてくれているだけで安心感を感じたりするよね。
舞ちゃんは『戦争』についてとても詳しい。戦争についての本を読んだり、映画を観たり、博物館に行ったり。戦争のことを話している時の彼女は少し表情が変わる。
メキシコ旅行でもホロコーストについての博物館に行ってきたそうだ。
「舞ちゃんはなんでそんなに戦争に興味があるの?」
私は聞いた。
「日本ってやっぱり平和やし、今の日本人って平和ボケしてるなって思うねん。戦争の映画観たりしたら苦しいし、自分自身傷つくんやけど、でもそれを観て”自分は生きてるんだ”って思う。”じゃあ、頑張らなあかんよね”って思うねん」
驚きの答えだった。戦争のことを知って『生きてるから頑張らなあかん』と鼓舞されるのだ。舞ちゃんこそ百田尚樹さんとぜひ話をしてみてほしい。2人が話しているのを私は横で聞いていたい。
それから舞ちゃんはメキシコ旅行の話をしてくれた。死者の日の話、人形島の話、もうタコスはしばらく食べたくない話など。ああだこうだ言いながら、自分の行ったことのない異国の話を聞くのは楽しかった。小説を読んでいる時のような楽しさだった。そして何より舞ちゃんと話しているのは純粋に楽しかった。