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第57話 ニコ生「月刊Hanadaチャンネル」に出演する

 「うちで彼女の本、出しましょう」

 月刊Hanadaチャンネルの主催者であり、月刊Hanadaの編集長『花田紀凱さん』は、生配信終了後にそう言った。

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 2023年10月4日。ニコ生配信が始まる2時間ほど前、私は小学館の向かいにある中華料理屋へ向かった。社長と打ち合わせをするためだ。店に入ると社長が誰かと話しているのが見えた。見覚えのあるふわふわパーマだな。

「お待たせしました。・・・あ!間宮さんご無沙汰しています」

 社長と一緒に座っていたのは小学館編集者の『間宮さん』だった。私が初めてのグラビアの編集担当をしてくれた方である(第7話参照)。

 私は席についた。間宮さんにこれから花田さんのニコ生に出演する話をし、そして私の初めてのグラビアの話になった。

「あの日の朝、なんで遅刻したんですか?」
間宮さんはグラビア撮影の朝、集合場所に遅刻したのだ。
「あれは申し訳なかったです。目覚ましをかけ忘れたんです。西田さんにも淡々と叱られました」
「笑笑笑」

間宮さんに月刊Hanadaの感想を話す

 間宮さんに会えて緊張がほぐれたように思う。”私の始まりのグラビアからもう2年。色々あったな”と過去を振り返ると、今いる位置を改めて確認でき、気持ちがとても落ち着いた。

「間宮さんとは来月のエイトウーマン写真展の打ち合わせだったんですか?」
店を出て間宮さんと別れてから、社長に聞いた。
「ちゃうで。俺が店で待ってたら、たまたま間宮さんが店でご飯食べてただけやで」
間宮さんに会ったのは本当に偶然だったようだ。緊張ほぐしてくれてありがとうございました。

間宮さん緊張ほぐしてくれてありがとうございました

 月刊Hanadaを刊行している『飛鳥新社』に着いた。玄関口で待っていると、体の大きな男性がやってきた。この日のゲストジャーナリストの『石井孝明さん』だ。
”走ってきた?まさか誰かに追われてきたのか!?・・・”
そう思うくらい汗だくだった。石井さんは最近、クルド人問題で殺害予告を受けている。ジャーナリストって命張る仕事やな・・・。

 中に案内され、編集長の『花田さん』、編集者兼アシスタントの『野中さん』と挨拶をした。
 私が「村西とおるさんの連載が面白いです」と、月刊Hanadaの話をすると、花田さんは私に本を3冊くれた。

花田さんがくれた3冊

『古本春秋』は花田さんが書いた本であり、『にゃんこ四字熟語辞典』は20万部売れているおすすめの本として。
 私は『にゃんこ四字熟語辞典』に惹かれて早速読み始めた。私は猫が大好きだ。そして本の猫の写真は可愛すぎた。

「この本の中で僕の1番好きな言葉があるんですよ」
花田さんが言った。私は焦った。花田さんを前にして花田さんが書いた本ではなく『にゃんこ四字熟語辞』に夢中になっていたからだ。急いで『古本春秋』を手に取ると・・・。

「これこれ、『海千山千』。この猫たちの写真、傑作でしょ」

花田さんが大好きなページ

”え!?花田さん、自分の本の話でなくて『にゃんこ四字熟語辞典』の話してる!”

 私は花田さんが好きになった。自分の本には全く触れず「このページの猫の顔が最高だ」「この本を書いた西川清史さんは僕が信頼する人で・・・」などをずっと話していた。
 動物好き、猫好きに悪い人はいないという私の持論は正しい。

 「お待たせしました。お待たせしすぎたのかもしれません」
 野中さんがやってきた。胸に〈ナイスですね!〉とプリントしてある村西とおるTシャツを着ている。私を今回の特別アシスタントに推薦してくれたのは『村西とおる』さんなのだ。

私を推薦してくれた『村西とおる』さんの
Tシャツを着る野中さん

「野中くん、そういうの着てくるなら言っておいてよ。僕もそのTシャツ持ってるのに!」
花田さんが野中さんに言った。
「いやいや、自分で考えて動くというのがうちの社風じゃないですか」
野中さんは花田さんに遠慮することなく言った。 
 花田さんの人柄、2人の信頼関係に触れて、これから始まる生配信が楽しみになった。

生配信中もTシャツをきちんとアピールした野中さん

 生配信が始まる5分前、花田さんは配信開始前の画面を見ながら私に言った。
「僕は猫が好きだから、月刊Hanadaにも猫を入れてもらってるんですよ」

花田さんが猫好きだから月刊Hanadaは猫がモチーフ

 私はきゅんとした。伝説の編集長と言われてる人が、猫好き故に自分の雑誌のモチーフを猫にしている。さらにいうと雑誌のタイトルが自分の名前。
 花田さんの意向でそうなったのだろうが、この雑誌を作る関係者が、花田さんのことをどう見ているのかが少し想像できた。花田さん、愛されてるんやな…

 生配信が始まった。今日のテーマは「クルド人が埼玉県川口市で大暴れしている件」について。

生配信スタート!話についていけるかなぁ…

 私は政治に関して疎い。”クルド人”という言葉も最近知った。月刊Hanadaチャンネルからオファーを受けて、付け焼き刃だがテレビでニュースを見始め、月刊Hanadaを急いで購入した。

「雑誌はね、お弁当みたいなものなんだよ。色んなおかずが入ってるから、好きなおかずだけ食べたっていいの。雑誌もね、最初から最後まで読む人いないですよ。好きな記事や興味のある記事だけ読んでもらえたらいいんですよ」

 花田さんはそう言っていたが、私は月刊Hanadaを最初から最後まで全て読んだ。はじめは”オファーをされたから読まなければ!”という義務感で読み始めた。けれど読んでみると、これまで触れることのなかった情報が新鮮で、初めて食べる外国のお菓子を物珍しくて全部食べてしまうように、全部読んでしまった。
 内容は理解し辛かったものも多いが、月刊Hanadaは私にとって新しい世界だった。

月刊Hanada10月号と11月号。すこしでも予習を…

 生配信中、印象に残った言葉が2つある。
「僕たちは右翼だと言われていますが、違います。真ん中です。でも左から見ると真ん中も右も全部『右』なんですよ」

左以外は全て右。その逆も然り!その通りだな

「マスコミは影響力がある団体や組織のことは叩かないんです。ややこしいことになるから。影響力がないから叩くんです」

マスコミは影響力のないものを叩く!メモメモ… 

 この2つは政治に限ったことではないと思った。私が過ごしてきた社会やSNSの世界、世の中の全てに当てはまることだと思う。ここでその具体例を挙げると話が長くなので控えるが、これを読んでいる人たちも身近なことで思い当たるところがあるのではないだろうか。

 有料タイムに入る前に休憩を取った。野中さんと石井さんが席を外し、花田さんと2人きりになったので、私はすかさず聞いた。
「花田さんが一番心に残っている本はなんですか?」
これはこの日、私が花田さんに聞きたかったことのひとつだ。

「僕は小説が大好きで、涙した本が心に残っているんだけど・・・。壷井栄の『二十四の瞳』だね。あれは第二次世界大戦中の話で・・・」
 花田さんは小説の内容を話し始めてくれた。

花田さんが一番心に残った本は『二十四の瞳』

 『二十四の瞳』は実家の本棚にあったけれど、読んだことはなかった。次読む本はこれにしよう。花田さんのひととなりをさらに知るためにも。図書館で借りるのではなく本屋で買ってこよう。

「花田さん、その話、休憩中に終わりますか?」
野中さんが私たちを現実に戻した。
「あ、もう休憩時間終わり?はいはい始めましょうか」
もーいいとこだったのに。野中さんったらー。

 有料タイムが始まると話の中心は私になり、AVの話になった。
「僕はAVを見たことないんですよ」
花田さんが言った。
「じゃあどこで(セックスを)覚えるんですか?」
野中さんが聞いた。すると花田さんはこう言った。

「ああいうのは、見て覚えるもんじゃないよ。自然とできるもんなんだよ」

 花田さんが言うと不思議と説得力があり、私は何も言えなかった。野中さんは「名言みたいですね」と一言冷静に述べていた。

セックスは見て覚えるんじゃない、自然とできる!

 ちなみに野中さんは私のデビュー作を見てくれたそうだ。石井さんは「コメントを控えさせていただきます(笑)」と言った。
 私の作品、観てくれてありがとうございます!

クルド人問題で殺害予告されたジャーナリスト石井さん

 2時間に及ぶ生配信が終わった。
「藤かんなさんのnoteを全部読みましたけど、むっちゃ面白いです。あれは本にしないんですか?」
「僕も読みましたよ。読みやすいし、惹き込まれるものがありました」
 野中さんと石井さんが私のnoteを絶賛してくれた。こうして新しい世界にチャレンジすることで、そこで新しく出会う人たちが私の文章を読んでくれる。これもまた月刊Hanadaチャンネルに出させてもらったご褒美だ。

皆さん私の話も真剣に聞いてくれました

「うちで彼女の本、出しましょう」

んん?今誰が言った?花田さんだよね?伝説の編集長が、私の文章を本にしましょうって言いましたよね?
 花田さんが社長に向かって言ったその言葉を、私はしっかり耳に刻み込んだ。

 帰り支度をしていると花田さんは自ら率先して帰りの車を用意してくれ、エレベーターを呼んでくれていた。

 エレベーター前で花田さんと社長が話をしていた。
「彼女の本、是非うちで出しましょう」
再びそう話す花田さん。私は少し離れたところから、しかと2人の姿を目に焼き付け、その言葉を再び耳に刻んだ。

花田さん、ありがとうございました!

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藤かんな
サポートは私の励みになり、自信になります。 もっといっぱい頑張っちゃうカンナ😙❤️