第137話 『4/8woman写真展』ウラ話〜吉高寧々が駆けつけてくれた〜
何かを察していた吉高寧々
———朗読会がライブ配信できたら良いのにな。
2024年12月24日21時、風呂に入りながら、そう考えた。
写真展でここ2日間『はだかの白鳥』の朗読会をやってきた。その様子は録画して、のちにXで一部だけをアップするが、もっとあの臨場感を伝えたい・・・・・・
風呂上がり、Xの通知を見る。
———これや。
スマホを持つ手が震えた。明日は私の在廊日。彼女のインスタライブで、朗読会を配信してもらおう。すぐにエイトマン社長に連絡をする。
「明日、吉高寧々と『はだかの白鳥』朗読会したいです」
「了解!」
返事はすぐにきた。きっと彼女に了承は取っていないだろうが、寧々ちゃんならやってくれるだろう。
すぐにXで告知をする。西田幸樹と吉高寧々との3人の写真を一緒に投稿。
懐かしい。今年の5月に行われた『#寧々密会』写真展の写真だ。あの時、寧々ちゃんは毎日在廊して、5月なのにすごく寒くて、天気も悪くて、みんなどんどん疲弊していって・・・・・・
ただ「愉しかったな」と思う。心身ともにぐちゃぐちゃで、大変だったからこそ、思い返すと「愉しかった」。
そんな『#寧々密会』も今年の出来事か。もうずっと昔のことのように感じる。
夜、23時過ぎに社長経由で吉高寧々からLINEが来た。
私は急いで朗読するページを写真に撮り、赤の印をつけて送った。彼女は急遽、写真展に来てくれることになり、半ば強制的に朗読会に参加。その上で「練習しておきたい」。胸には感謝と愛おしさしか湧かない。
だがあまりにもトントン拍子すぎる。寧々ちゃんが写真展に来るのも、社長が彼女にお願いしたのだろうか・・・・・・?
翌日、写真展会場で、吉高寧々はずっと『はだかの白鳥』の朗読を練習していた。読む部分にピンクの蛍光ペンで線が引いてある。
———寧々ちゃん来てくれてありがとう。そして急遽、朗読も引き受けてくれてありがとう。
「今日、本当は来れる予定じゃなかってんけど、なんか、感じたんよ」
んん?
「写真展、大丈夫かなって嫌な予感がしてん。それで社長に連絡したら、予想通り内部がゴタゴタしてるって。これは行かないとあかん! って思って、来てん」
内部のゴタゴタとは、写真展の4日目くらいから起きていた。簡単に言うと、まず八蜜凛が体調不良で欠席。昨日は社長が熱を出し欠席。そして今日は社長と入れ替わるように、マネージャー山中が発熱で欠席。さらには美乃すずめとつばさ舞までも高熱とのこと。
誰かが呪ってる!?
そう思わざるを得ない状況。そんなピンチに駆けつけてくれたのが、吉高寧々だった。
吉高寧々と『はだかの白鳥』朗読会
読むのは第4章の272ページ。
「AVは精度の高いリトマス試験紙」
AV女優であることがバレエ教室にバレ、教室の先生たちからなんやかんや言われ、その夜、社長と電話で話をする場面だ。吉高寧々には社長のセリフを朗読してもらった。
「AVやったって人生終わらへんねん。来世も来来世もあるんやから。というか精一杯生きることに、AVしてるしてないなんて関係ないねん」
彼女はエイトマンに来て、AV女優になって7年。きっと何度も社長から言われた言葉だろう。
「AVってな、精度の高いリトマス試験紙やねん。その人が自分にとってどういう人か、瞬時に分かる。バレエの先生たちは結局、あなたのこと見てなかってん。AV女優って仕事だけで判断した。(中略)ようそんな教室に8年もいたな。あなたも悪いで」
ああ、この言葉にどれだけ励まされたか。この人は味方なんだと、思わせてくれた瞬間だった。
そう私には味方がいる。昨日、美乃すずめと一緒に朗読をしていた時にも思った。
———「今の私には味方がいる」
第4章、318ページの10行目。
これを書いていた時は、「きっと(味方は)いるはずやねん」だった。いると信じたいが、まだ不安が残る。「私には味方がいる」と、自分に言い聞かせている状態。
しかしあれから2年経ち、5月の『#寧々密会』写真展すらずっと昔に感じるほど、濃い時間を過ごしてきた。今の私にあの時の不安を感じる余裕はない。満ち満ちのピッチピチ。こうしてピンチを察し、駆けつけてくれる味方もいる。
「(はだかの白鳥を)読んでて、かんなちゃん、ほんまに大変やったなって、もぉ泣きそうになった〜」
朗読後、吉高寧々はそう言いながら泣いていた。
きっとそう思ってくれたのは、寧々ちゃんが同じように大変なことがたくさんあったからやと思うで。私の倍以上の年数、エイトマン社長と一緒に、AV女優として生きてきたんやから。これからも私はあなたの味方です。