第42話 エイトウーマン写真展2022⑦〜凪ひかる、星まりあ、藤井蘭々という強い味方がやってきた〜
11月15日(火) 8日目
この日、私は写真展には行かず、インタビューを受ける仕事だった。インタビューを終えると、山中さんから連絡が入っていた。
<かんなちゃんの写真を購入された方がいるのですが、特典のチェキ撮影を今日できますか?>
私は会場へ急いだ。チェキ!?サイン書く練習せな!
凪ひかる、藤井蘭々、星まりあ!新星エイトウーマンにビビる
会場へ着くと、控え室に『凪ひかるさん』、『藤井蘭々さん』、『星まりあさん』がいた。彼女たちは最近、他事務所からエイトマンへ移籍してきた女優さんであり、AV女優としての大先輩だ。
私は彼女たちを前に緊張していた。これまで会ったエイトウーマンたちとは少し違う雰囲気を感じたからだ。まるで都会のキラキラした女子高の文化祭に、田舎の芋女子高生が混ざってしまったような気分になった。私は彼女たちと同じ空間にいてはいけない気がしてきて、一度トイレに退散した。
「いやいや、彼女たちも同じエイトマンやん。普通におったらいいねん。なんで私ビビッとんねん」
私は己に喝を入れて、控室に戻った。
しかしそこにひかるさんたちの姿はなかった。内心少しホッとして、さらに量を増している差し入れたちを眺めた。おそらく彼女たち3人に宛てた差し入れだろう。お酒やお菓子、商品券など。桐の箱に入った高級メロンまであった。メロンを見て、送り主の下心を感じたのは私だけだろうか。
彼女たちのファンの厚みはすごかった。この写真展に彼女たちの写真は展示されていない。しかし、オンラインでの写真購入者が多く、彼女たちはファンとのチェキ撮影にどんどん呼ばれていた。
ひかるさんたちを見ていて、漫画『キングダム』の”山の民”を思い出した。楊端和率いる山の民はとにかく戦闘能力が高く、最強なのだ。エイトマンはそんな最強の戦士を味方につけたのではないだろうか。私はとても心強い気持ちになった。
11月16日(水) 9日目
藤かんな、スタッフお休み
この日私は休みをもらっていた。写真展のことが気になったが、3日後に控えているAV撮影に向けて体を整えた。
11月17日(木) 10日目
西田幸樹は日々写真展を成長させる
「イメージを考えるとき、立体にもしてみるんですよ。平面と立体じゃ全然違うからね。せっかくだからみんなにも見てもらおうと思って」
「自然光が入ると昼と夜で光の感じが変わるんだよね。だから遮光してライトで光をコントロールするんですよ」
「そのままのライトだと光がドロンとしちゃうから、筒をつけて光をシャープにしてるんだ」
「ここに立つと正面にはつかさちゃんの顔のアップがあって、左には寧々ちゃんの顔のアップがあるからね。おすすめビュースポットとして足場を作っとこう」
開催中もどんどん変化を加えていく西田さん。進化し続ける写真展。
「まるで舞台やな。最終日に向けてどんどん最高になっていく」
社長はそう呟いていた。
藤かんなはマドンナトッププロデューサーに感謝する
「かんなちゃん、お疲れ様ですー!」
マドンナのトッププロデューサー『富山さん』が来てくれた。私がマドンナの面接へ行った時、”この人サイコパスちゃうか?”と思った人である。
「女優の時のかんなちゃんと、スタッフの時のかんなちゃんは雰囲気が違うくて、ぱっと見わからなかったです。Twitterの『#かんなの写真展日記』も楽しく拝見させてもらってます。カレンダー買いますね!マドンナの事務所に飾ります」
そう言ってカレンダーを買ってくれた。富山さんは写真展会場を出た後、社長に丁寧なメッセージをくれていた。
私は”マドンナの専属になれてよかった。マドンナでどんどん頑張ろ”と思った。ただ富山さんが「マドンナの事務所に飾っておくからね!」と買ってくれたカレンダーに、マドンナ女優が1人もいないことには胸が痛んだ。
エイトウーマンを名付けた小学館編集長はとても謙虚
写真展を語る上で忘れてはならないのは、小学館週刊ポスト編集長の『澤田さん』だ。彼はエイトウーマンの企画者であり『エイトウーマン』の名付け親である。
澤田さんほぼ毎日のように写真展へ足を運んでくれ、会場の隅に立って私たちを見守ってくれていた。私が受付に座って”なんかずっと隅っこで立ってるお客さまがおるな”と思っていたら、それが澤田さんだったりするのだ。
「僕は見させてもらっているだけなので、みなさんの邪魔にならないようにしてます」
と、こちらが頭を下げたくなるほど謙虚な方である。
「あの人はタバコ吸いながら、無表情で人殺せる人やで」
社長は澤田さんのことをそう評価する。これは”感情を殺せる人が一番強い”という意味で、つまりは澤田さんのことを大絶賛しているのだ。
「ちなみに俺は感情剥き出しにするから、人殺す前に絶対止められるタイプやねん」
ええ、想像つきます。
桃尻かなめがボソリ「もの大事にする人は一途だよね」
夜の<今日を振り返る会>には『桃尻かなめさん』と、カメラマンの『塩原洋さん』が参加した。
「かんなちゃんのiPhone、むっちゃちっちゃくない?バージョン何?」
桃ちゃんが私に聞いた。
当時は2022年11月。iPhone14まで発売されていたが、私が持っているのはiPhone6だった。それを伝えるとみんなは震えていた。
「実は最近、アプリがなかなか起動しないんです。写真展で女優さんたちの写真撮るの、すごく手間取っちゃって・・・」
私がそう言うと、みんなには「確実に買い換え時やん!」とツッコまれた。
しかし横に座っていた洋さんがボソリと言った。
「あの・・・僕もiPhone6なんです」
その時のみんなの衝撃の顔!アプリの起動が遅いため、私はこのシャッターチャンスを逃してしまった。
「僕も最近急に、アプリの起動が遅くなりました。この前なんていきなりLINEが消えちゃって。あまりバージョンが古いと、使えなくなるアプリが出てくるらしいですよ。あ、でも、LINEは再インストールしたらちゃんと復元したので、まだ使えるかも」
みんなが「まだ使うんかい・・・」という顔で洋さんを見ている。その表情を写真に収められなかったことは言うまでもない。
洋さんと私が「バージョンの古いiPhoneは使い易いよね」「いきなり最新のバージョン持っても宝の持ち腐れになりそうですよね」と話していると、横に座っていた桃ちゃんがボソリと呟いた。
「ものを大事にする人って、一途だよね・・・」
「なになに!?なんかあったん!?」
桃ちゃんは過去の恋愛経験や、なぜAV女優になったのかなどを話してくれ、私たちは熱く語り合った。私はこの日、桃ちゃんと仲良くなれたような気がした。
またいつかこうして桃ちゃんと、そしてエイトウーマンたちと話せる日が来ればいいな。