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第135話 『4/8woman写真展』ウラ話〜千原せいじのスゴイ話

千原せいじは運命論者

 千原せいじさんが、『4/8woman写真展』を見に来てくれた。2024年12月20日17時。
 私はせいじさんのYouTubeをよく見ていた。世の中のニュースなどに「そんなんアホやろ! バガ!」と喝を入れていく、彼の動画に元気をもらっていた。
 まずエイトマン社長が挨拶をして、「せいじさんに、どうしても訊きたいことがあるんです」と話し始めた。

「ジュニアさんが事故に遭った時のことです———」
 23年前、千原せいじさんの弟、千原ジュニアさんはバイクの事故に遭った。顔はぐしゃぐしゃ、体もボロボロ。病院で生死をさまよっていたらしい。そこに夜中、せいじさんがホステスのお姉ちゃんを引き連れて、病室にやって来た。
 せいじさんは、顔がぐちゃぐちゃのジュニアさんを見て、一言こう言ったそうだ。
「売れるな」
 そして病室から出て行ったらしい———

「あの時、せいじさんはどんな心境だったんですか?」
 社長は聞く。せいじさんは「ああ、そんなことあったなぁ」な顔で、語り始めた。
「僕、運命論者なんで、(事故で)死なへんかったと言うことは、『これ、売れるってことやな』って思ったんですよ」
 社長も私も動くことができない。そのくらい、言葉に重みを感じた。
 丸メガネをかけているせいじさんは、顎を引き、上目で私たちをじっと見ている。この人の瞳は、真っ直ぐでブレない。しかし威圧感は感じさせない、不思議な視線だった。

もうカウントダウンが始まっている

 次は私の質問ターン。
「せいじさんの将来の夢はなんですか?」
 丸メガネを外し「う"〜んっ」と、うつむき考えるせいじさん。人は困った質問をされた時、斜め上を見る傾向にあるが、せいじさんは斜め下を見た。本気で考えてくれているのを感じた。
「4日ほど前に、65歳で免許を返納しようと決めて———」
 せいじさんは語り始めた。
「僕、今、55歳で。1月生まれで。バイクが好きで、バイクであっちこっち行くのが好きで。そして北海道の五稜郭の桜が好きで。よくバイクをフェリーに乗せて、見に行ってて。だから、それをあと10年間、毎年見にいくので、ゴールデンウィークに休みを取ることを、決めましたよ」
「64歳の春まで、あと10回ってことですね」
 社長があいづちを打つ。
「そうです、そうです。もうこの歳になると、カウントダウン始まりますからね。言うてるまに死にますから」
 さらにせいじさんは続けた。
「中尾彬さんがご存命の時に教えてくれたんですけどね。(僕が)なんでそんな食いもんにこだわるんですか、めんどくさいでしょって聞いたん。そしたら(中尾さんは)違うんだよ。俺たちの歳になると、あと何回食事するか計算できるんだよ、って」
 だから中尾彬さんは1回1回の食事を無駄にしたくない、いい加減なものを食べたくないと言ったそうだ。
「女もですよ。1回1回のセックス。いつまでち◯こ勃つか分からへんから。今日が最後のセックスになるかも分からへん」
 せいじさんの言葉に、社長はぶるんぶるん首を上下に振る。
「だからノードラッグセックスでね。みんな(バイアグラとかに)頼ってるけど。おら"ぁは絶対、頼らないって、決めましたよ。もう最後のセックスかも分からない。その気持ちで。突然勃たなくなるそうですから」

千原せいじの魅力は「覚悟」

 エイトマン社長はよく言う。
「終わりを覚悟した奴が強い」
 大半の人は、分かってはいても「明日死ぬかもしれない」と常に考えて生きていないだろう。今がいつまでも続く、いつまでも若いまま、ずっときっと健康のまま。「終わり」つまり「死」の存在は知っていても、それをいつも想像するのは難しい。だからなんとなく日々を過ごしてしまう。居酒屋で上司の愚痴を言い続けたり、解決策を見つけない女子会でだべったり。「息してるだけで、今日もあたち、エライ」なんて薄っぺらい投稿が、ネットに流れたりする。
 せいじさんはいってもまだ55歳。それなのにもう、1つ1つの終わりを見据えている。
 だからこの人のYouTubeをいつも見てしまうんだろうな。
 単純だけれど、私はそう思った。惹かれる人にはちゃんとした理由がある。

 20分ほど話を聞かせてもらい、千原せいじさんは帰って行った。ゆっくり、1歩1歩、周囲をじっくり見ながら。
「へぇ〜肩甲骨剥がしの店か。まだまだ知らんもんあるなぁ。でもこんな店、もうかるんかいな」
 とでも言っているかのような後ろ姿だった。

千原せいじさん、ご来場ありがとうございました

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藤かんな
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