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第148話 アナタと吉高寧々の官能小説⑨〜看護師と密室の防音室で

 数日前から耳が聞こえにくくて、近所の耳鼻科に行ったんだ。初めて行く耳鼻科。患者は少ない。空いているのは都合が良い。
「Kさーん。診察室にどうぞー」
 僕の名前が呼ばれ、診察室で医師から簡単な問診を受けた。
「聴力検査しましょう。おーい、寧々ちゃーん」
 寧々ちゃん? なんだか馴れ馴れしいな。
 パタパタと小柄な女性がやってきた。きっと彼女が寧々ちゃんだろう。ピンクのナース服に、ベージュのカーディガン。どう控えめに言っても、僕の下心をくすぐる。
 寧々ちゃんから簡単な説明を受け、簡易便所みたいな狭い防音室に入った。ヘッドホンをして、右手にボタンを持ち、音の聞こえた時にボタンを押す。検査はものの5分で終了した、のだが。
 防音室を出ようとした時、寧々ちゃんに押し戻された。
 狭い密室で2人きり。何事だ。
「お兄さん、むっちゃ良い声してますよね」
 小さな椅子に2人で座る。寧々ちゃんの太ももが僕のももに当たる。じんわりと温もりが伝わる。
「営業の仕事とかしてるんですか?」
「いえ、営業は一度も・・・・・・」
「お兄さんが営業したら、私、壺でもなんでも買っちゃいそう」
 寧々ちゃんはコロコロと笑う。笑顔が近い。いい匂いもする。
 もしや彼女は僕を誘っているのか?
 つい妄想が膨らむ。ズボンがテントにならないよう、ポケットに手を入れ、股間の布を持ち上げた。違うことを考えなければ。
「つ、壺はないけど、これどうぞ」
 咄嗟にポケットに入っていた飴を渡した。金のミルクだ。
「ありがとう。金のミルクってなんかエッチな名前ですね」
 そう言われてみると、そうかも。
 やはり誘われている?
「ここで話してたことは、先生には内緒ね。あの人、嫉妬しいやねん」
 医師から嫉妬される看護師。一体どんな関係なんだ。
 彼女はこのスリリングな状況を楽しんでいるようだった。

 再び医師の診察を受け、耳掃除をしてもらうと、耳の調子はすっかり良くなった。受付で会計を済ませ帰ろうとする。
「Kさーん」
 背後から笑顔の寧々ちゃんがやって来た。
「忘れ物ですよ」
 さっきあげた金のミルクが返される。
 一体あの子は何がしたいんだ・・・・・・?
 
 帰り道、金のミルクの封を開けようとした時、アリのような小さな文字がパッケージに書かれているのに気づいた。090から始まるそれは間違いなく電話番号。
 誰につながるとも分からないが、得体の知れないスリルも悪くない。
 家に帰ったら、電話してみるとしよう。

(これはフィクションであり、4/8woman写真展での作品購入者への特典企画です)


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藤かんな
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