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ジョーカー フォリアドゥ から遡るミュージカル映画
ミュージカルってなんで急に歌い出すん?
フォリアドゥは興行的に大コケ。
世界的に売れてないそうですが、
日本人ってミュージカルあんまり好きではないのでは?...
というのも、タモリはミュージカルが嫌いで有名だそうです。最近知りました。
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嫌いな理由は「なぜ急に歌い出すのか?」です。
きっと、こんな理由でミュージカルを見ていて恥ずかしくなる日本人も多いのでしょう。
鬱ミュージカル映画の「ダンサーインザダーク」でこんな台詞がでてきます。
「ミュージカルってなんで急に歌いだすの?僕は急に歌いだすなんてことしないよ」
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「ダンサーインザダーク」のミュージカル映画好きな主人公セルマはこんなこと言われて思ったでしょう。
「ミュージカルってのは溢れ出る脳内イメージの感情爆発なんだよ!だから実際に歌ってるわけじゃねんだよ、ドアホ!」と。
というわけで、大コケしたけど、面白いとこもあったよねフォリアドゥ。
映画の中には様々なミュージカル映画のポスターがありました。
「バンドワゴン」「サマーストック」「スイートチャリティ」などなど...
・バンドワゴン
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「フォリアドゥ」の病院で患者達がみんなで観てるのが「バンド・ワゴン」です。
アステア演じる落ち目の舞台俳優トニーが、仲間と共に一発逆転のミュージカルを上演し、最終的に大成功を収めるというもの。
落ち目なアーサーが再び返り咲く妄想として、重ねてるんでしょう。
アーサーがレディーガガに「あんた何回もこの映画観てるから結末知ってるでしょ?」と言われます。
「バンドワゴン」は全てがラストにうまく行きますが、「フォリアドゥ」は...
・サマーストック
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女一人で農場を経営してるジュディガーランドの元に、劇団を引き連れて妹が帰ってくる。
農場でショーやるはめになったり、主人公が座長に恋してしまったりのドタバタコメディミュージカル。
劇中歌「get happy」は「フォリアドゥ」でも歌われる。
come on get happy
Get ready for the judgment day
さあ、幸せになりましょう
最後の審判の日への準備を整えて
「サマーストック」はハッピーエンドですが
アーサーは幸せにもなれず、死刑の審判が下ります。
1950年代のハリウッドミュージカルは歌って踊っていればハッピーになれていました。
そんな中ハリウッドミュージカルに影響を受けて、フランスで作られた、アンハッピーエンドのミュージカルが登場します。「シェルブールの雨傘」です。
・シェルブールの雨傘
「フォリアドゥ」監獄移送の際のアーサーと傘を上から見るショット。
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これは「シェルブールの雨傘」のオープニングで色とりどりの傘を上から写したシーンの引用じゃ?
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カラフルな傘が踊って見えるシーンです。
アーサーはミュージカル映画好きなので、雨が降ってたから「シェルブールの雨傘」を思いだしたんでしょう。(死刑になるかもしれないのに妄想してるなんて...)
「シェルブールの雨傘」は1964年ジャックドゥミ監督のフランス映画。自動車整備工の男と雨傘店の娘(カトリーヌ・ドヌーヴ)は結婚を夢見るがアルジェリア戦争で男が徴兵され、二人の恋が引き裂かれていく話。
色彩設計は「ララランド」に多大な影響を与えました。
部屋や登場人物の服装がカラフルなんです。
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恋人同士が結ばれない悲恋ミュージカルとしても、ララランドに影響を与えたでしょう。
フォリアドゥのアーサーも、ラストはレディーガガにフラれてしまいます。
裁判ミュージカル
フォリアドゥは裁判しながらミュージカルをします。
これ、けっこう新しいんじゃね?と思いましたが、意外とあるもんです。
・「ダンサーインザーダーク」
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なんでこんな嫌なもの見せるんだ!と思わずにいられないこの映画。
ミュージカル映画好きな主人公セルマは目が見えなくなっていく病気。一人息子もいずれ目が見えなくなる病気のため、昼夜問わず働いて息子のための手術代を稼ぐ。
しかし隣近所の男にお金を盗まれ、ゴタゴタしてるうちにセルマは男を拳銃で撃ってしまい、死刑が確定する。
セルマはアーサーのように妄想癖がある。
死刑判決を受ける重要な裁判にも関わらず、裁判中に妄想で踊りだしてしまう。
アーサーも裁判中に皆殺しにする妄想をする。
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ちなみに「ダンサーインザダーク」で目の見えないセルマを支えようとする人物をカトリーヌドヌーヴが演じてます。
おそらく「シェルブールの雨傘」でヒロインを務めたので起用したんでしょう。アンハッピーエンドも同じです。
・「シカゴ」
こちらも裁判をしながらミュージカルを繰り広げる展開の映画。
下記の動画は裁判ミュージカルシーン。
ボブ・フォッシー原作のミュージカルを映画化したもの。
スターを夢見るロキシー(レネー・ゼルウィガー)は不倫相手を射殺し、殺人容疑で逮捕される。無罪を勝ち取るために守銭奴な弁護士であるビリー(リチャードギア)に弁護を依頼する。
ビリーはロキシーを悲劇のヒロインに仕立てあげ、世間の同情を買って無罪を勝ち取ろうとする。
ロキシーは美人なので、世間やメディアに持て囃され、一躍有名人になっていく。
ジョーカーもコメディアンでスターになることを夢見ていた。
殺人で世間からスター扱いされる展開も似てますね。
「フォリアドゥ」もこれぐらい派手に楽しく裁判ミュージカルを繰り広げていたら、もっと売れていたのではないだろうか...
大コケミュージカル
・ワン・フロム・ザ・ハート
こちら1982公開のフランシスフォードコッポラの監督作品。
同棲生活が長いカップルが倦怠期へと突入。ついに大喧嘩となり、お互いに新しい恋人を見つけ始める...というもの。
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これは公開前から少し話題になっていました。
撮影監督のローレンス・シャーがインタビューで影響を受けたと公言してますね。
おそらく強烈なライトアップや画面の色に影響を受けてるんでしょう。
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続いてジョーカーの色調。
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色調もそうですが、踊りが少なく、歌が登場人物の心情を表している部分もそっくりです。
マーティンスコセッシのミュージカル映画「ニューヨークニューヨーク」やコッポラの「ワン・フロム・ザ・ハート」も当時は大コケしてしまいました。
そんな大コケまで真似しなくてもいいのにね!