100倍、身につく国語力 (38) 語句篇
❤小~高校生と、母親向けのレッスン
(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
語句篇 ③
【女性語からみた日本語】
1.日本語特有の女性語の特徴
(3) 独特の女性語の表現
女言葉といわれると、何となく分かっ
たような気になりますが、当の女性に尋
ねてもあまり明確な答えが返ってきませ
ん。まさか女性が使うのだから、女言葉
でいいのじゃないかしらと、思っている
わけではないでしょうが…。ここでは女
言葉実態について考えてみたいと思い
ます。
そこで、女性語は何かを知るためには、
私たちが普段耳にする女言葉に、どうい
う傾向があるのかを見ることによって、
その特徴が明らかになってくるのではな
いでしょうか。
【 傾向】
① 文頭の感動詞に「あら」、
「まあ」をつける。
② 名詞の接頭語に「お」、
「ご」をつける。
③ 文末に「だわよ」、「だわね」、
「のよ」が使われる。
④ 漢語に比して和語が好まれる。
⑤ 人称代名詞の「わたくし」、
「あたし」を使う。
①の感動詞の「あら」は、感動、応答、
呼びかけなどに頻繁(ひんぱん)に使われ
ますが、これはほぼ女性語の独占のよう
で、もし男性が使うとオネエ系だと思わ
れてしまいます。
②の接頭語の「 お」は、男性も使う場合
がありますが、圧倒的に女性に好んで使
われます。これはは日本語の特徴の一つ
と見られる表現で、例えば次のような
用例があります
・おコーヒー、おビール、お紅茶
・お砂糖、お醤油、おソース、
・おしゃもじ、おスプーン、
おコップ
・おリンゴ、おミカン、おブドウ
・おご飯、お新香、お大根、おナス
・お化粧、お鏡、おブラシ、おぐし
・お靴、おカバン、お財布、お服
・お受験、お教室、お塾、お月謝、
・お絵描き、おそろばん、お習字
右の例は普通に見られますが、さす
がに「 おケータイ、お消しゴム、おコピ
ー」などはないようです。どのような例
があるのかは、実際に使われている用例
を集めて見る必要がありそうです。ちな
みに、もし次のように「お」をつけると、
きっと誤解を招きそうな例ですね。
・これはおパール(オパール?)
です。
・お夜分(親分?)に失礼します。
・おなら(オナラ?)女子大学の
・お嬢さんです。
③の文末の「 だわよ」「 だわね」
「 のよ」も、女性に頻繁に使われます。
これこそ女性語の決定版のようなもの
で、男性が使うことはまずないといえ
ます。この表現は明治の時代に、親し
い女性の間柄、特に女学生同士に広ま
り、ときには男性に対して使われて、
かなり流行(はや)ったといわれています。
④の和語を好む女性の傾向は公式の
場でのスピーチや挨拶など見られます。
しかし、女性が漢語を使用しない方が
いいというのは、今に始まったことで
はなく、平安時代の紫式部(むらさきしき
ぶ)が『 紫式部日記』に書いた有名な話
が残っています。それは弟が父の指導
で漢籍を読んでいるのを、いつもそばで
聞いていた姉の式部の方が早く理解でき
たので、弟の学問に力を入れていた藤原
為時(ためとき)が、ふと「 この子が男の
子でなかったのが不運だった」と嘆いた
というエピソードです。
⑤の自称詞の「わたくし」と「あたし」
は、かなり歴史が古く、江戸時代には
広まっていたようです。しかし、はじめ
は男女の差はあまりなく、「わたくし」
を敬意の高いものと考えていたほどで、
順次「わたし」「わらは」、「みずから」、
「み」、「われ」、「おれ」などが、
身分に応じて使われていました。ところ
が、女性の間では次第に「わたくし」
「わたし」の他に、
「わたい」、「わっち」、「わちき」、
「あたし」、「あたい」、「おら」、
「おいら」、「こち」
などが使われるようになり、現在に
至っています。
ちなみに、江戸時代に使われていた女性
語は、「女房ことば」としてまとめられた
文献(『 大上(おおかみ)ろう御名之(おんな
の)事(こと)』)が残っているほどで、宮仕
えをする女性と、それより身分の低い女房
たちの間で特殊な使われていた語彙として、
「 女房ことば」が約120語も挙げられて
いるようです。それよると、女性だけに
食物に関する語が87語もあり、そのうち
の3分の1に「 お」がついているのです。
例えば、「おでん」(でえんがく)、「 おは
ま」(はまぐり)、「おみや」(土産)、「おひ
や」、「おひやし」、「おつけ」「おしたじ」
(醤油(しょうゆ)で、吸い物の下地)などが
あり、視覚、触覚(しょっかく)、形状、製法
などに関わる言葉が多く見られるという特徴
があります。
その後、「女房ことば」を使用した女房たち
の言葉は、武家や町家の子女まで普及して、
その語彙(ごい)も増えていきました。それが
「 女中ことば」といわれるもので、良家の
娘たちの間にも広がり、社会にも広がって
いったわけです。
❤こうしてみると、女言葉、いや女性語には
長い歴史がのあることがわかり、とても
興味深いですね。
アナミズ (2024.03.20)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?