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100倍、身につく国語力(205) 作品篇
❤小~高校生と、母親向けのレッスン
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杉みき子の作品について ⑥
3 『小さな町の風景』の文体の特徴
杉氏はこの『小さな町の風景』で読者
に、いったいどんなメッセージを伝え
ようとしたのでしょうか。この本に収め
られた作品は、1981~1982年にかけた
雑誌『日本児童文学』の連載やその他の
雑誌からいくつか選び、それに書きおろ
し数編を加えてまとめたものだと、本人
が「あとがき」に書いています。すると
杉氏本人の意向が大きく反映されている
わけで、そこから彼女の文体の特徴に
ついて考える手がかりとしましょう。
1) 厳選された丁寧な言葉遣い
杉氏の文章の特徴は、何より言葉遣い
が丁寧でわかりやすく、しかもリズムが
いいということです。これは、童話作家
として必須の条件であろうが、創作する
ときに意識的にそうしていたのではなく、
ごく自然に場面を思い描くような心境が
常にあったようです。その精神は、どう
やら少女時代から培われたのではないで
しょうか。講演会の話によれば、家にあっ
た『世界文学全集』や『日本文学全集』
などを、意味も分からずに片っ端から読
み漁ったというので、まさに「読書百編
意自ずから通ず」を実践していたという
のです。読解力が上昇するにつれて、
『落語全集』なども一生懸命に読んでいた
お陰で、言葉の洒落や落語独特のユーモア
やリズムが好きになり、「じゅげむ、じゅ
げむ、ごこうのすりきれ…」などの言葉遊
びは体に染み込んでいたのでしょう。
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そこで、今、杉氏が使う用語の特徴とし
て、4章の「至福の季節」(p92~p93)の
一例を挙げることができます。
<杉氏の使用用語の特徴>
① 和語を重んじ、漢語を極力使
わないように心がけている。
・名詞
…おととし、人びと、
おさな子、ほほえみ、
よろこび、やすらぎ、
いちどのよそおい、
となり、路地うら、
川ぞい、つばさ、
ことば、 やさしさ、
むすび、いちめんに、
きんもくせい
・動詞
…やってくる、目をさまし、
窓をあけた、ただよう、
生まれ、おちる、とどけ
られ、かけこむ、かなで
られる、なごませ、
あびて、たどる、おののく、
つづかない、かなでる、
こぼれひろがる
・副詞
……とつぜん、たえまなく、
日いちにちと
・形容詞
…つめたい、なつかしい、
かそけく(古語、かすか
の意味)
・形容動詞
…しずかな
②文章の最後の部分は体言止め
が多い。
奏楽の音、秋の序曲、日々の
はじまり、おさな子にはよろ
こび、いちどのよそおい、
しずかな音楽、季節の終わり
③リフレーンが頻繁に登場する。
人々を酔わせ、心をなごませ、
たえまなく、かそけく、(中略)
日いちにちと遠のいてその
音楽が、ついに、かそけく、
かそけく、むすびの楽章も
かなで終え、そして、人々は
見る
この4章を見るだけでも、杉氏の文章
の特徴がよく出ており、日本語の語彙や
リズムなどの美しさを保つため、最大の
努力を払っていることがよく理解できま
す。ただ、「かそけく」というのは、いか
に美しい単語だとしても、大人を含めて
子どもには理解し難く、子ども向けの
語彙としては少しレベルが高いような気
がします。
❤杉氏は幼少の頃より、読書三昧
(どくしょざんまい)で、知識
が豊かにあったことがわかります。
しかし、決してそれをひけらかす
わけではなく、言葉選びには慎重
だったようで、好感がもてます。
アナミズ(2024.09.04)