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100倍、身につく国語力(204) 作品篇

 ❤小~高校生と、母親向けのレッスン
 (1年間で国語力の悩みが解決できる!)

 杉みき子の作品について ⑤

 8章の「海のある風景」の話はいず れ
も幻想的な内容になっていて、まる で
ファンタジーのようです。
以下に、 5篇
を要約すると次のようになります。

<5篇の要約>
 ・「月夜のバス」

  …月夜に海沿いの国道を
   歩いてる少年は、国道を
   通り過ぎるバスの窓が海
   のような青色になって
   おり、その中に魚がいっ
   ぱい泳いでいるのを見た。

ネットのイラストより転載

 ・「水族館幻想」
  …雨の日、少年と老人は、
   水族館に閉じ込められた
   魚たちを海へ返してやり
   たいと思った一瞬、水槽
   が海に変わったような
   幻想に包まれた。

 ・「青い地図」 
  …少女は、帰り道で拾った
   地図の青い丸印の場所を
   求めて探検に出る。丸い 
   印はあじさいで、最後の
   丸印のある山頂の切れ
   目からあじさい色の海を
   見た。

 ・「入り日のコーラス」
  …海辺を走るバスの中の
   少年、コーラスを聞い
   たような気がして、
   海岸に行って調べて
   見ると、テトラポット
   に寄せる波が歌声の
   ように沸き起こって
   いたのだと知った。

 ・「白馬の背に飛び乗って」
  …屈託のない少女は、スナ
   ックの女店主から、「島
   の娘が白波から変わった
   白馬の背に乗って海を渡
   り、若者と添い遂げる」
   という詩を聞いた。なん
   と店主も白馬の背にのる
  ようにして自分の大切な絵
  の具を運んできた話をして
  くれたので、少女は勇気を
  もらった。

ネットのイラストより転載

 この本の8章の話を見ると、いずれも
幻想的であったり、変身譚的であったり
して、『小さな町の風景』の中でも際
立ってロマンに満ちた内容となってい
ます。特に「白馬の背に飛び乗って」は、
8章の最後の話というだけでなく、この
本の全体を締めくくる役目を果たして
おり、冒頭にある「あの坂をのぼれば」
と対句のような位置関係にあって、重要
な関連性があるものと考えられます。

 なぜなら、「あの坂をのぼれば」は、
幼少のころから祖母に「あの坂をのぼ
れば海がみえる」と子守歌のように聞
かされていた少年が、日々の重荷に耐え
切れなくなったとき、ついに一人で山に
登る決意をしました。しかし、現実に
は長い山道の上り下りを繰り返しで、
辛くて気持ちが萎えそうになっていた
ところ、頭上に現れた海鳥から一枚の
羽が舞い落ちるのを見て、ようやく海
が近いことを実感することができたの
です。
 
 つまり、少年は諦めかけていたとき
に、まさに救いの手が差し伸べられた
わけで、この話は一人では実現しなかっ
た出来事に対して、成功への苦しみと
そこから脱皮した安堵を感じさせます。

 同様に、「白馬の背に飛び乗って」は、
家や古い因習に束縛された少女が、恋す
る若者に命がけで白馬に飛び乗って想い
を遂げるわけで、まさにドラマチックな
物語の展開となっています。実はこの話
の背景となっているのは、女店主も若い
頃、周囲の反対を押し切って好きな絵の
世界の勉強に飛び込んだ経験を語るが、
それと白馬の少女の決断と重なりあって
います。

 ❤この話は、店主からを聞かされ
  た少女の心にまで波及効果を
  及ぼうそうとしているもので、
  全体が三層構造になっていること
  がわかります。

 アナミズ(2024.09.03)


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