100倍、身につく国語力 (52) 独特表現篇
❤小~高校生と,母親向けのレッスン
(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
独特表現篇 ⑬
【独特表現の日本語の特徴】
2.日本語特有の独特表現の実態
(13) 気になる「可能性がある」の
言い方
台風24号は日本列島を縦断しながら、
全国に甚大な被害をもたらしました。
特に風雨の勢いは最大級に近いらしく、
日本に上陸するかなり前からテレビの
天気予報で注意を喚起していました。
その中で一番気になるのは、「台風
が上陸する可能性がある」という表現
で、これは「 台風が上陸する恐れが
ある」というのが自然でないかと思った
のですが、みなさんはどのようにお考
えでしょうか。確かに「可能性がある」
といえば、程度性が高まったことになる
ので、逆に「恐れが高まった」は、やや
不適当になるかも知れません。ただし、
この可能性は、「見込み」や「公算」と
置き換えることができます。
この「可能性」は「実現性」や「蓋然
性(がいぜんせい)」(ある事柄が起こる
か否かについておそらくそうなるだろう
と思われる度合いだと考えられます。
それが、数学的に式化された場合、確率
と呼ばれる。)とも違って、最も使い方
の広い言葉のようです。
ちなみに『明鏡国語辞典』を調べてみ
ると、以下のように説明してあります。
① 実現できるという見込み。
現実となりうる見込み。
「台風が上陸するーがある」
「審査に格するーが高い
/低い」
「 全員遭難のーが大きい」
【表現】
可能性には「高い/低い」
「大きい/小さい」「強い/
弱い」「多い/少ない」など
の程度表現があるが、上の
用例のような「 高低」ついで
「大小」が一般的。
② 何かを実現できる潜在的な要素。
「さまざまなーを秘めた若い国」
となっており、①の用例では、否定的
な事態や、好ましくない事柄に対しても
使用することはあるという考えを示して
います。②の用例では、プラスの意味に
限られているようです。
このように「可能」という語には、
「できる」という意味を内包しているの
で、マイナスの意味に取るとすれば、
それはオカシイのではないかという考え
が出てくるのは自然かも知れません。
もともと「可能性」には、明治の初め
に possibility (possible) の翻訳語として
考え出されたもので、プラス・マイナス
のいずれの場合意味も表すようになった
と考えられます。
ちなみに、このpossibility という単語を、
『ジニアーズ英和辞典』で調べると、次の
ような意味になっています。
① ありうること、起こりうること。
{…の/…という}可能性、実現性、
{of/that の節}
【用例】
・There is a strong {high} possilblity
of rain on the weekend.
(週末は雨の可能性が高い)
・a remote {low} possibiliy
(わずかな {低い} 可能性)
・There is no possibility that he
will succeed.
(彼が成功する可能性はない)
のような例が出ています。そこで、そ
のプラスの用例として以下のようなもの
が挙げられています。
【プラス】
・the possibility of enemy attack
(敵からの攻撃の可能性)
・We should look into that
possibility.
(その可能性を検討してみる
べきです)
・There are two possibilities. Which
restaurant would you like to go?
(可能性は2つあります。どちら
のレストランに行きたいですか)
・There is stong possibility that they
were left tostarve.
(彼らが餓死するまでに放置された
可能性は高い)
② {通例~les;複数扱い}{…の}機会
(となるもの){for};将来性、
発展性(potential)
・a person of great possibilities
(大いに将来性のある人)
・open up the possibilities of doing
(…する展望を開く)
・There were several possibilities for
avoiding war.
(戦争を避ける機会はいく度か
あった)
<possible もプラス>
・The possible improvements are
endless.
(進歩の可能性は無限だ)
・What possible ideas can you
have?
(どんな考えがあるっていうん
だい?)
・Two years ago, this would not
have been possible.
(2年前なら、これはありえ
なかっただろう)
英語の辞書には、上のような説明に
なっていることがわかります。
❤このように possible を含めて、ここ
での用例はほとんどプラスの面しか
取り上げていないというのは、やはり
この possibility は、プラスの意味あい
の強い言葉だと言えるのではないで
しょうか。
アナミズ (2024.04.03)
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