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100倍、身につく国語力(72)外来語篇

 

❤小~高校生と,母親向けのレッスン

 (1年間で国語力の悩みが解決できる!)
 
カタカナ語篇 ⑩
【日本語の外来語の特徴】
 
4.外来語を 乱用する国民性
(5) 外国語の翻訳事情(その2)
 
 ここでは、改めて柳父章の『翻訳語
成立事情』(岩波新書)
を元に翻訳語
の背景を考えていくことにします。

まず目次を見ると「社会、個人、近代、
美、恋愛、存在、自然、権利、自由、
彼・彼女」
という10個の単語が挙げら
れています。
 
 現在では、これもほとんどカタカナ
で表現されるようになりましたが、
やはり「原語→翻訳語→カタカナ語」
という歴史的な経緯(けいい)を考えて
みる必要があると思います。
 
 ① 社会→ソサイアティ
        (society)
 ② 個人→インディビジュアル       
       (inndividual)
 ③ 近代→モダン(modern)
 ④ 美 →  ビューティ(beauty)
 ⑤ 恋愛 →  ラブ (love)
 ⑥ 存在 → エグジスタンス   
        (exixtence)
 ⑦ 自然 →ネイチャー(nature)
    ⑧ 権利 →ライト  (right)
 ⑨ 自由 →フリーダム(nature)
 ⑩ 彼・彼女 → ヒー/シー
         (she/he)
 
 ちなみに、上の10個の単語を使って、
簡単な文章(思いつき文)を書こうと
すると、比較的容易に表現することが
できます。これも翻訳語の言葉が存在
するからで、先人のご苦労に頭の下が
る思いがします。
 
・【思いつき文】
  日本の伝統的な「家」中心の考え
 方は、家長の権力が絶対的で、その
 考え方や存在は無視することはでき
 ず、たとえ男性が美しい女性を見初
 めたとしても男女(彼・彼女)の婚姻は、
 家族主義に大きく影響されました。

  しかし、そのような封建的な発想
 は、西欧化した近代の日本社会では
 自然に崩壊していき、多くの人が
 個人の権利意識に目覚めるとともに、
 自由に恋愛するようになりました。
 (→無理に作った文章で、少し不自然
 かも?)これらの翻訳語は多くの知識
 人の発想や議論が交わされ、現在の
 形に定着するまで、悪戦苦闘の経緯
 を経て出来上がっていったといわれ
 ています。

ネットのイラストより転載


 今、上の10個の言葉から「社会」と
「恋愛」という二つの言葉について、
どんな翻訳事情があったのかについて
考えてみましょう。そのいずれも現在の
日本人が、日常生活では頻繁に使って
おり、まさか明治時代に登場した新語
だったことに、気がつかないかも知れ
ないからです。
 
・【社会という言葉】
 「社会」という言葉は、英語の
 “society” であるということは今では
 だれでも知っています。例えば、
 社会科、社会主義、社会発展、社会
 貢献、社会人、国際社会、社会責任、
 社会問題などのように、毎日のよう
 にニュースで出てきます。
 
 しかし、これらかいずれも明治10年代
以前には存在しない言葉で、誕生以来の
わずか一世紀ぐらいしか経っていないの
です
。この「 社会」という言葉は、日本
社会にそれに相当する言葉がなかった
ため、当時の人々は翻訳するのにかなり
苦労したことが分かります。なにしろ
日本では、そういう概念がないわけで、
まず、“society” に対応する概念造りから
始めざるをえないわけです。
 
 まず”society” に対応する日本語の翻訳
の歴史を簡単に振り返ると、次のように
なります。
 
 ①  1796年(寛政8)、蘭学者稲村
   三伯著の『 波留麻和解』
   (オランダ語の辞書)では、
   genootschap が「 交ル、
   集ル」と訳されている。
 ②  1814年(文化11)、通詞(通訳)
   の本木正栄(まさひで)著の
   『 暗厄利亜(アンゲリア)語林
   大成』(英和辞典)では、
   society が「 伴侶 そうばん」
   と訳されている。
 ③  1855~58年(安政2-5)、桂川
   甫周著の『 和蘭字彙』では、
   genootschap が「 寄合又集合」
   と訳されている。。
 ④  1862年(文久2)、堀達之介等編
   の 『 英和対訳袖珍辞書』では、
   societyが「 仲間、交リ、一致」
   と訳されている。この辞書は、
   幕末~明治初期に最も普及して
   いたらしい。
 ⑤  1863年(元治元)、フランス学
   創始者の村上英俊著『仏語明要』
   では、societeが「 仲間、懇、
   交リ」と訳されている。
 ⑥  1867年(慶應3)、ヘボンJ.C.
   Hepburn著『 和英語林修正』
   では、Nakama; kumi; renchiu;
   shachiu (「 仲間、組、連中、
   社中)」と訳されている。
 ⑦  1873年(明治6)、柴田昌吉・
   子安峻(たかし))共著の『 附言
   挿図英和字彙』では、soceityが
   会(ナカマ)、会社(クミアイ)、
   連衆(レンシュウ)、交際、
   (こうさい)、合同(イッチ)、
   社友(しゃちゅう)」と訳され
   ている。この辞書は、明治前半
   の時代に、広く使われていたと
   いう。
 
 ❤以上から、societyの訳語は、狭
  い範囲の人間関係を表す言葉で
  表現されていることに気づかさ
  れます。当時、「国」とか、
  「藩」という言葉はあったので、
  societyは、結局のところ個人を
  単位とする人間関係だという
  ことになります。
 
アナミズ (2024.04.23)

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