100倍、身につく国語力(64)発音篇
❤小~高校生と,母親向けのレッスン
(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
オノマトペ篇 ④
【日本語のオノマトペの特徴】
3.オノマトペを多用する国民性
(4) 宮沢賢治のオノマトペの使い方
普通、風が吹くときは、「ヒュー、
ヒュー」とか、「ビュー、ビュー」と言
いますが、かの宮澤賢治は、あの有名な
『風の又三郎』の冒頭部分で、次のよう
に表現しているので、そこを引用します。
「どっどどどどうど どどう
どどどう、青いクルミも吹
き飛ばせ青いクルミも吹き
飛ばせばせどっどどどどうど
どどうど どどう」
『 風の又三郎』より
私が幼い頃に、これを初めて読んだ
ときの戸惑いは未だに忘れられません
でした。なぜなら、先生の説明を聞い
ていても、「どっどど ……」と吹く
風が、一体どんな風に吹くのか、サッ
パリ見当がつかなかったからです。
賢治の表現法を見ると、まだ熟して
いない「くるみ」も、「かりん」も吹
き飛ばしてしまえと、風にけしかける
ような力強い「どっどど」の連呼は、
読者を物語世界に引き込んでいく仕掛
けのようです。つまり、その秘密は
賢治独特のオノマトペの使い方にあった
のです。
『風の又三郎』には他にも、「どう(と)」
や「ひゅう ひゅう」というのがある
ので、そこを引用してみましょう。
① そのとき風がどうと吹いて
来て教室のガラス戸はみん
ながたがた鳴り、学校の
うしろの山の萱や栗の木は
みんな変に青白くなって
ゆれ、教室のなかのこども
は何だかやっとわらって
すこしうごいたやうでした。
『風の又三郎』より
この「どう」は強い風を表すオノマト
ペとして、『虔十(けんじゅう)公園林』
や、『どんぐりと山猫』、『注文の多い
料理店』などにも使われています。
② 電信ばしらどもは、ブンブン
ゴンゴンと鳴り、風はひゅう
ひゅうとやりました。
『シグナルとシグナレス』より
風と電信柱は、「シグナル」と「シグ
ナアレス」の仲を邪魔する厄介(やっかい)
な存在のようです。なぜなら、風の音が
あまりにも大きいので二人は話すことも
自由になりません。
その一方で、随所に登場する
「ぶんぶん」、「ひゅうひゅう」、
「ぐうんぐうんひゅうひゅう」、
「ブウウ、ブウウ」、「ぐわん
ぐわん」、「フイウ」など、
風にまつわるオノマトペは、悲哀とも
とれる明るい調子を与える役目を果たし
ています。
賢治は独特のオノマトペを使ったこと
で有名ですが、今、その中から幾つか
ここで紹介しておきましょう。
・その時です、お月さまがカブン
と山へお入りになってあたりが
ポカッとうすぐらくなったのは、
『シグナルとシグナレス』より
・霧がツイツイツイツイ降って
きて、あちこちの木から
ポタリッポタリッと雫の音が
聞こえてきました。
『十力の金剛石』より
・そこには冷たい水がこぼん
こぼんと音をたてて、底の砂
がピカピカ光っています。
『貝の火』より
❤宮沢賢治は、さまざまな作品を
書きましたが、作品のほとんど
が死後に発表されました。特に
童話は、いまでも多くの読者に
親しまれています。
<参考> 栗原敦監修『 宮澤賢治の
オノマトペ集』(ちくま
文庫)
アナミズ (2024.04.15)
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