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100倍、身につく国語力(217) 作品篇

❤小~高校生と、母親向けのレッスン

 (1年間で国語力の悩みが解決できる!)

 杉みき子の作品について (17)

6. 祖母と「おばあちゃん」の相関関係
 杉氏の作品にはいろんな場面で、「お
ばあちゃん」がしばしば登場するが、
それは幼少時の環境が影響していると思
われます。『小さな町の風景』でも、
「おばあちゃん」はなんともいえない深
い味わいを出しており、それは、彼女の
祖母に対する想いが、そのまま反映され
ているようです。それは、彼女は講演の
中で祖母について語っている箇所をみれ
ばよくわかります。

 もちろん、『小さな町の風景』は、少年
や少女が主人公の物語が中心ですが、脇役
としての「おばあちゃん」の存在は見逃せ
ません。講演会の記録によると、杉氏に
とって、作品中での「おばあちゃん」の原
体験は、自分の祖母にまつわる記憶だと
いうのです。それは彼女が3,4歳ぐらいの
とき、信州松本に住んでいたおばあちゃん
(父の母)が冬になるたびに、避寒がてら
に12月ごろ高田へ来て、翌年の4月頃に
高田公園のお花見を済ませて帰っていくの
が年中行事だったそうです。

 その思い出は、彼女の講演の内容を見れ
ば、よくわかります。

  「そのおばあちゃんが家に
  居る時は、しょっちゅう私も
  まとわりついて本を読んで
  もらったり、針仕事の邪魔を
  したりしていたのですが、
  このおばあちゃんが、私が
  たまに新しい本を買ってもらう
  と、それを読んでくれる役目
  だったのでね」

 と懐かしそうに述べています。

ネットのイラストより転載

 そして、彼女は新しい絵本を買って
もらったときは、字が書いてないものも、
丁寧に説明してあるが、あるときいつも
と違っていたというのです。

  それは、ページを開いてみて、
  「あ、これは桜の花が咲いて
  いる春の景色だね」と。「こ
  れは夏、海水浴をしているから、
  夏の風景だよ。これはもみじ
  が綺麗だから、秋の景色。
  これはスキーを しているから、
  冬の景色だよ」と、春、夏、
  秋、冬ということを教えてくれ
  たのですね。
 
 とあるように、筆者が特に注目した
のは次の部分です。何度もおさらいを
するように繰り返している内に、自然に
季節の移り変わりを覚えていったので
しょう。子どもは理屈ではなく、実体験
として自然の変化と名前が一致しており、
そこではじめて確認できるこの何よりの
証拠でだといえます。

 杉氏はこのようにして、名前の本来の
意味を体で覚えながら、例えば、冬に
なれば、「雪の降る季節」はこうであり、
「冬とはこういうもの」であるという
ように一つずつ確認していったのでしょ
う。このことから杉氏の言葉遣いは、単
なる思いつきではなく、さまざまな表現
の中でも、特に「雪」に関したものは、
体験に根ざした重みが強く感じられます。

 ちなみに、『わらぐつの中の神様』
(2016.3)というのは、本人もかなり
思いを込めた作品だと考えていることが
わかるので、これも講演会の内容から
一部を以下に引用することにします。

  私の作品の中でもおばあ
  ちゃんというのは、この
  「わらぐつの中の神様」は
  典型的にそうだとおもい
  ますけれど、子どもや孫に
  いろいろ細かいことを始め、
  大きく言えば人生の生き方
  みたいなものをそれとなく
  教えてくれる諭してくれる、
  そういう存在として書いて
  いますね。これは、本当に
  無意識で書いているのです
  けれども、子どもの時のそう
  いう記憶が私を導いて来て
  くれたのだと思います。

ネットのイラストより転載

 この作品は、児童文学の優秀作の一つ
と評価されおり、国語の教科書にも掲載
されている。雪国の厳しい冬の生活環境
の中で、少女が温かく人々と交流するの
は、人間関係を重んじる杉氏の考え方の
基本であろうと思われます。

 この本では、主人公のマサエは、なか
なか乾かないスキー靴をきっかけにして、
おばあちゃんの「わらぐつ」についての
昔話を聞き、心を込めて作っていた「わ
らぐつ」と、おじいちゃんとの出会いや
その「わらぐつ」の中にいると信じてい
た「神様」について知ることになります。

 ❤主人公のマサエはこの昔話を
  通して、おばあちゃん、おじ
  いちゃんとの距離が縮まり、
  親しみを感じるようになり
  ます。少女はそこからさらに
  一歩進んで、「神様」の存在
  を信じる気持ちになっていく
  と考えられます。

 アナミズ (2024.09.17)

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