100倍、身につく国語力(226) 作品篇
❤小~高校生と、母親向けのレッスン
(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
漱石の『夢十夜』について (7)
次に「第六夜」についても、同じよう
にO君の中3と高3の要約文を併記する
ことにします。ここでも、それぞれ書い
た内容にかなりの差異があるので、それ
がどのように違っているのかを考えてみ
ることにします。
【第六夜】
① 中3の要約文
ある日私は運慶が護国寺で
仁王を刻んでいるというため
見学に行った。そこには多く
の人がいたが全員が明治の人
だった。すると若い男が運慶
のことを褒めていた。そして、
私に彫刻とは、鑿で鼻や眉を
作るのではなく、木の中に埋
まっている物を鑿と槌の力で
掘り出すのだということを教
えてくれた。それを聞いたの
は家に帰って、樫を彫ったが
仁王は出てこなかった。
② 高3の要約文
私は運慶が護国寺で仁王を刻
んでいるという噂を耳にし、
行ってみると大勢が集まって
批評していた。風景は鎌倉
時代のようだが、見物人は
明治の人である。
中でも車夫が多く、運慶は
彼ら無教養な話には耳をかさ
ず刻み続けている。すると、
若い男が私に話しかけ木の
中にうまっている仁王を運慶
は掘り出しているだけだと教
えてくれた。そこで、私は家
に帰って実践してみたが木の
中に仁王をみつけることは
できなかった。
<講師の要約文>
こんな夢を見た。私は、仏師
の運慶が護国寺の山門で、
仁王を刻んでいるという評判
を聞いた。運慶は鎌倉時代の
人物だが、見る人は好き勝手
に仁王像のことを話していた
が、運慶は何も感じない様子
で仁王を彫り続けている。
見物人の男が、あれは木に埋
まっている仁王を「のみ」と
「ツチ」で掘り出している
だけだと言っている。 それを
聞いた自分は、ひとつ仁王を
掘り出してみることにした。
それで、家にあった木を彫っ
てみたが、仁王は彫り出せな
かった。明治の木には仁王は
埋まっていないと悟り、今日
まで運慶が生きている理由が
分かった。
この「第六話」は、運慶が仁王像を彫
り出す話であるが、登場人物は鎌倉時代
の運慶、明治時代の野次馬、若い男と
自分という三様の人物構成になっていま
す。このような構成は漱石の得意とする
手法で、彼の小説の主人公の心の葛藤や
恋のもつれのなどの三角間関係は、ほぼ
この式で成立しているといっても過言
ではありません。
❤上の作文例を見ても。O君の
高3時の要約文は、中3のそれ
と比べ、登場人物の関係を
よく理解していることがわか
ります。しかし、高3の場合
でも、なぜ運慶が登場したの
かがよくわかっていないよう
です。
このことから、もう少し深読
みをすることが必要だ思われ
ます。
アナミズ (2024.09.25)