100倍、身につく国語力(211) 作品篇
❤小~高校生と、母親向けのレッスン
(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
杉みき子の作品について ⑪
4.『小さな町の風景』の構造パターン
この短編集は、1982年に一冊にまと
められたが、これに先立つこと10年前
の1972年に、『小さな雪の町の物語 』
が世に出されています。この両書の内容
を比較してみると、とても深い関連性の
あることがわかります。なぜなら、後者
の内容や構成が前者のそれに非常に類似
しているからです。
この類似点から見て、杉氏の作品には、
一種の構造上のパターンが存在するとい
えます。さらにいえば、杉氏の作品には
定型化されたパターンがあるので、これ
以下にその典型的な例を挙げてみること
にします。
1)少年、少女の成長パターン
少年たちは、単に主人公として行動す
るだけでなく、彼らの多くは何かしら
個人的な問題を抱えています。しかし、
杉氏は彼らがそれに打ち勝つためにもが
き苦しんだり、人知れず葛藤したりして
も、それを打破していけるように温かい
視線で背後から励まし続けるのです。
そして、最後には子どもたちが立派に
成長を遂げるといわれ、一種の「子ども
讃歌」のストーリーになっています。
<例>
・山へ行く道
…少年はいくつも坂を上り下
りしながら「山へ行く」の
で、不思議に思っている。
・乳母車
…少女は幼な子の懸命な歩み
を見て、自ら踏み出す勇気
をもらった。
・あの坂をのぼれば
…少年は坂の上り下りを諦め
かけたとき、海鳥に励まさ
れて元気になった。
・夜のくだもの屋
… 少女は下校途中の暗い夜道
で、いつもくだもの屋の明
かりで助けられ、くだもの
屋夫婦のお陰だと感謝した。
・旗
…けがで療養中の少女は、登校
日の前日、窓から見た窓から
見たクラス旗に感動して、
学校にもどる勇気を得た。
・かっこう
…かっこう音の信号を渡る少女
は、それが本物の声だと
わかって急に元気が出て明る
くなった。
・ふたたびかもめ
…家出した少年は、列車の窓の
外で必死に飛ぶかもめの姿を
見て、家に戻る決心をした。
・小さな小さな橋
… 少年は一度小さな橋を渡って
迷子になったが、今までの
世界から飛び出すきっかけに
なった。
・白馬の背に乗って
…少女は、スナックの店主から
島の娘が白馬に乗り海を渡っ
て若者と添い遂げた話を聞き、
自分も頑張ろうという勇気を
もらった。
❤このように見てくると、
いずれも少年少女たちが
さまざまな困難に打ち勝
しながら、さらに前進して
いく様子がよくわかります。
アナミズ(2024.09.10)