100倍、身につく国語力(220) 作品篇
❤小~高校生と、母親向けのレッスン
(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
漱石の『夢十夜』について (1)
漱石といえば、『吾輩は猫である』や
『坊ちゃん』などの作品で、国民的作家
ととして有名なので、恐らく知らない人
はいないでしょう。
しかし、『夢十夜』(注1)という短編集
は、多く一種独特のオーラを醸し出して
いる異色作ではないでしょうか。とにか
く、漱石は自分が夢の中で見た話を10本
の短編集に仕立て上げているので、読者
は何度チャレンジしても意味がわから
ない場面や文章に少なからずに驚かされ
ます。これは読者のだれもが同じような
感覚に襲われるようで、誠に不思議な
作品だと言わざるを得ません。
(注1)『夢十夜 他二篇』(1986、
岩波文庫)に依る。
さて、この不思議な作品ですが、作文
教室の講師陣は、「子ども作文教室」の
教材 (注2) としての可能性を話し合い、
何度も時間をかけて話し合いました。
問題の中心は、これが中学3年生の教材
に向いているか否かについて、議論が
交わされることになったということで
す。
意見として「中学生には難しい」と
いうのが多く出たのですが、漱石の作品
にじかに触れることは生徒にメリット
が大きいという共通理解を得ました。
そこで、実際に、中学2~3年生に要約
文を書かせたところ、話の内容や展開
を解釈したり、分析したりする過程で、
生徒は知的な好奇心を抱くようになり
ました。
その結果、この『夢十夜』の学習は、
中学生が「難しいけれどおもしろい」と
いう認識を新たにしたのは、講師として
も得難い経験でした。(注2)『子ども
作文教室 手引書』(2023年度改訂版、
子ども国語教育学会、p6参照) 最近の
子どもは明治時代の作品に触れる機会が
減っているが、この『夢十夜』をきっ
かけとしてほしいのです。そうすれば
漱石の他の作品にもの関心が持てるよう
になり、「おもしろさ」が楽しめるで
しょう。
ただ、「おもしろい」といっても、
そう思わせる秘密はどこにあるのでしょ
うか。それは考えれば考えるほど謎と
して脳裏に深く残ってしまいます。現実
には、一定の知識や教養を身につけて
いる大人と、まだ発達段階である子ども
が、『夢十夜』を読んで「おもしろい」
という反応が帰ってくるのは、いった
いなぜでしょうか。筆者はまず大人と
子どもの受ける「おもしろい」という
印象が、どのような差異があるのかに
興味を抱きました。
❤そこで、かつて当作文教室で
学んだS君が、中学3年生の
ときに書いた要約文と、高校
3年となった現在の要約文と
を比較し、この3年の間にどの
ような変化がみられるかを調
べることにまし。その際すで
に本人から直接ヒアリングした
内容と筆者が書いた要約文を
入れながら、双方が『夢十夜』
をどう理解しているかを比べて
みることにしました。
アナミズ (2024.09.19)
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