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100倍、身につく国語力(215) 作品篇

❤小~高校生と、母親向けのレッスン

 (1年間で国語力の悩みが解決できる!)

 杉みき子の作品について (15)

 ところで、杉氏の生活環境は「雪」
と深く関わっており、それを題材とし
た物語をたくさん書いています。事実、
『小さな町の風景』の表紙は、「雪」
にスッポリ覆われた町の風景の水彩画
となっています。杉氏の作品を見れば
いかにそれを慈しんでいるかがよく
わかる。今、『小さな雪の町の物語』
「冬のおとずれ」の冒頭部分を見る
とそれがよくわかります。

  おしゃれな少女が、自分にいち
  ばんよく似合う衣装や身のこな
  しを本能的に知っているように、
  土地というものも、どこの土地
  にせよ、それぞれ自分の身に
  かざるにふさわしい衣装を持っ
  ている。この町は、自分にもっ
  ともふさわしい衣装として、冬
  という季節をえらんだ。くもり
  の日の似合う町である。

  長いがんぎに寄りそわれた木造
  の家なみは、この町に城のあった
  数百年のむかしから、すこしの
  変化もなく、低い空の下でまど
  ろんでいるように見えた。

ネットの写真より転載

 これは、まさに杉氏の「雪」に対する
想いが集約されているのではないでしょ
うか。「おしゃれな少女に似合う衣装」
と切り出し、「この町のもっともふさわ
しい冬」と対比させることで、「冬」を
最大限に賛美することにより、強烈な
インパクトを与えてくれます。

 「この町」はもちろん高田市であり、
ふさわしい衣装として「冬の季節」を
選んだことになります。このような
文体は、それはたとえ雪国育ちの筆者
のような者であっても、まったく気が
つかなかった新鮮な発想で、筆者が
15才まで生まれ育った富山県黒部市と
いう町に、強く郷愁へと駆り立てる
ほどでした。

 今、思い起こしてみると、「雪」には
マイナスのイメージがつきまとう傾向が
あります。事実、「みぞれ、あられ、
ふぶき、地ふぶき、猛ふぶき、風雪、
落雪、融雪、暴風雪、豪雪、大雪、豪雪、
雪崩、除雪、雪下ろし、雪かき、雪捨て
場」などは、雪国地方の気象や重労働と
関連する場合が多いのです。

ネットのイラストより転載

 その一方、「白雪、雪どけ、雪景色、
雪焼け、雪の肌」のように肯定的なイメ
ージもあります。さらに、子どもにとっ
ては「雪だるま、かまくら(雪室)」作
りや、「雪合戦、滑り台、ジャンプ台」
という遊びが、雪国で何よりの楽しみ
でした。ちなみに、驚くべきことには、
日本語には「雪女、雪男、雪ん子」の
ように擬人化されて使う言葉遣いがあり、
雪」と人間が同じ仲間のように考えられ
ていることです。

 ❤上に見られるように、雪国
  育ちの人でなければ、なか
  なかイメージできない言葉
  があります。ただ、「雪女、
  雪男」などは「雨女、雨男」
  というようにイメージを重
  ねて考えると、分かりやす
  いかも知れませんね。

 アナミズ (2024.09.14)


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