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1990年12月12日(水)

【冒険者組織:加藤 愛奈・富田 剛】
「手伝いましょうか」
「あ、富田君。手伝ってもらうと助かるー」
 富田 剛の声かけに手伝ってほしい気持ちを込めて加藤 愛奈が返事をする。ここは冒険者組織。かなり大きめの段ボール2箱を抱えて教官室に向かっていた加藤を見つけて富田が声をかけたのである。小柄な加藤が2箱一緒に運ぶのはどう考えても合理的ではない気がするが、それが加藤の性格なのだろうかと富田は少し失笑する。その後、加藤から2箱受け取り、並んで教官室に向かう。加藤の指示した場所に箱を置いた富田は加藤に声をかける。
「まだ、あります?」
「いや、これだけよ。ありがとう」
「了解です。では」
「あ、ちょっとまって」
 他に荷物がないことを確認して富田が帰ろうとしたところ、加藤が呼び止める。
「ちょうどよかった。私富田君に用事があったの。昼ごはん一緒にどうかな」
「ご飯食べに行こうかと思ってたところなのでいいですよ。一緒に行きましょう」
 そう言って二人は南食堂へ向かった。

【南食堂:加藤 愛奈・富田 剛】
「確かにそれできたら便利ですよね。3ヶ月ぐらいは短縮できるかな」
 カツカレーを食べ終えた富田 剛がこう口にする。ここは熊大南食堂。お昼時ということもあり、たくさんの大学生が食事に訪れている。今、加藤 愛奈から聞いた話は確かに冒険者としては魅力的な話である。
「で、それを俺に出来るようになれってことですか?」
「こういう言い方はアレだけど、とりあえず富田君にやってもらって、出来るようになるかどうかを試したいって感じにはなるわ」
 富田の質問に多少難しい顔をして加藤が言葉を返す。その言葉を聞いて、富田は軽く頷く。
「まあいいですよ。休みの日に加藤さんに会えるのも楽しみって言えば楽しみだし。また毎週日曜日になりますか」
「今回は前回と違って多少長い目で考えないといけないのと、特殊な場所に入らないといけなから曜日は土曜日で隔週ぐらいで大丈夫よ。もちろん用事があるとかであれば無理しなくても大丈夫」
「わっかりましたー」
 ある程度の内容を理解して富田は納得した表情を浮かべる。最後に一つだけ残った疑問について加藤に尋ねる。
「このことも前回同様に完全に守秘義務的な内容になりますか」
「そうね、これも完全に秘密でお願いします。富田君と私だけのひみつ」
「やーだーなーエレクトラさんったら」
 脊髄反射的に富田が大声で叫び、周りで食事をしていた大学生たちが一斉に加藤と富田に視線を送る。二人は恥ずかしそうに食事済のお盆をもってそそくさとその場所を後にした。

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