1991年3月14日(木)
【鶴屋:富田 剛・多田隈 五月】
「わー、とみたん。ありがとう。これずーっと欲しかったの!」
満面の笑顔で多田隈 五月はこう言葉を発する。ここは百貨店『鶴屋』。熊本最大級の規模を誇る百貨店である。本日鍛錬の後、富田 剛と多田隈は喫茶店『煉瓦亭』で昼食を共にしたが、富田からホワイトデーのプレゼントをもらえずに多田隈が不機嫌になった。本日はホワイトデーなので、バレンタインデーにチョコをもらった女性に男性はお返しとしてクッキーだったりマシュマロだったりを返す。富田も今年はいくつかチョコを貰ったので、貰った人たちにはもれなく、お返しを行った。ただ、多田隈からはチョコをもらっていないので、正直この反応は富田も理解に苦しむ。多田隈が言うには、自分がチョコをあげてないのは2月14日の時点では自分と富田が一緒の部隊になる前で、知り合いでもなかった。でも、今の関係だと絶対チョコあげるはず。だから実質富田はチョコを貰っているはずだからお返しをするのが当たり前だと言うことだ。バレンタインデーにチョコをもらってないのに、ホワイトデーに本当はもらったはずなのでプレゼントを返すというのには何かデジャブ感がある富田だが、詳細は思い出せない。でもまあ多田隈の言い分も多少わかる気もするので、富田は多田隈に何か欲しいものをプレゼントする旨を伝える。そこで多田隈に欲しい物を尋ねると、以前からずっと欲しかったピアスがあるとのことでそれをプレゼントするために『鶴屋』に来たのである。多田隈はピアスをつけるために一旦化粧室に向かい、ピアスを付けて富田のところに戻ってくる。
「あ、いいね。似合ってる」
富田の言葉に多田隈は満面の笑顔を浮かべる。その笑顔を見て、富田も多少あった疑問を払拭し、プレゼントをして良かったとの気持ちになった。