見出し画像

1991年2月27日(水)

【南食堂:川口 耕輔・右田 良子・判 祐市・四谷 謙詞・佐々木 雅美・藤原 静音】
「では川口くん。本当にお世話になりました。卒業後も頑張ってね」
「おう、お前らも頑張れよ」
 全員が食べるものを購入し、テーブルに座って一息ついたタイミングで右田 良子が発した言葉に、川口 耕輔が返事を返した。ここは『南食堂』。本日王家の紋章部隊は午前中地下3階の探索を行い、無事に戻ってきている。明日の冒険者組織の送別会において、今年大学卒業の川口が冒険者を引退することになっているので、この部隊での探索は本日が最後だったのである。1期生として入隊し、約1年少しの時間を冒険者として活動してきた。現在迷宮探索は地下3階まで達しており、おそらくまだこれよりも下位層がありそうなことは想像に難くない。まだまだ未知の迷宮探索を続けたい気持ちもあるが、一旦ここで冒険者としては諦め、関東方面の出版社にて4月から社会人として働くことが決まっているのである。ちなみに右田と判 祐市、佐々木 雅美も4回生なので、今年大学を卒業するのであるが、判は大学院に進学、右田と佐々木はとりあえず就職はせずに冒険者を続ける道を選んだのである。
「ところで耕輔が抜けた代わりの戦士って誰か考えてる?」
 カツ丼のカツ一切れを箸で持ち上げながら判 祐市が質問する。それを聞いて右田が口を開く。
「うーん。いちおう考えてはいる。川口君隊長だったから出来れば隊長できる人がいいじゃん。だったら選択肢は少ないよね」
「少ないってかそんな人でうちに来てくれる人いる?」
 考えを聞いた後で佐々木 雅美が返事を返し、この意見に四谷 謙詞と藤原 静音も賛同しているようだ。
「まあ、とりあえず明日編成するらしいから、まあ私の実力をご覧あれってことよ」
 こう言いながら右田はスパゲッティナポリタンをフォークにくるくると巻きつけて、口に運んだのであった。

いいなと思ったら応援しよう!