1990年10月8日(月)
【剣士鍛錬場②:元木 美麗・砂川 憲剛・他】
「やっぱり町田君が抜けてますかね」
真剣な表情で剣士志願者たちの模擬戦を眺めている砂川 憲剛に元木 美麗が声をかける。午前中の剣士鍛錬場②。本日も剣士志願者全員が模擬戦に取り組んでいる。ポイントもそうだが、町田 康祐の強さは群を抜いている。町田以外に29人剣士志願者がいるが、模擬戦で勝負になっているのはその内の6〜7名であり、それ以外の志願者は勝負にすらなっていない。
「確かに町田君は強いな。単純比較は難しいが、おそらくこの時点での川崎君よりは上、村川君と右田さんともいい勝負となっているはずだ」
町田の動きを見つめながら砂川がこう口にする。砂川のイメージで町田と村川が戦った場合、体格のハンデで村川の攻め手が限られるが、町田の攻撃もおそらく村川に当てることができない。長期戦になって体力勝負になると町田に軍配が上がるかもれない。町田と右田であればどうか。右田も村川同様に体格にハンデがあるが、町田の懐に飛び込むのは村川より右田のほうが可能性が高い。例の才能があるからだ。現在、砂川の判断では町田の評価は村川と同格、右田よりは下ということになっている。
「このまま町田君には強くなってほしいものだ」
左手に持ったノートに何やら記入しながら砂川はこう呟き、元木もそれに同意して頷いた。