1995年9月23日(土)

【北食2階】
「全員揃ったようね」
 目の前に座っている人たちを見渡しながら太田黒 佳美がそう言葉を発した。
「これは、何の会合っすか?」
 太田黒の言葉を聞いて、本田 仁が質問すると同時に山口 可奈が話し始める。
「皆さんも知っての通り、10月1日から13期生の入隊試験が行われます。毎年、運営部の方ですべての試験を行ってきましたが、今年から、冒険者のみなさんにも入隊試験を手伝ってもらえないかと提案したいと思います。もちろんそれに見合った日当は払いますよ」
「日当はかまわないけど、具体的に何をするんですか」
 詳細についての質問を富田 剛は山口に聞き返す。
「基礎訓練と、適性検査で職業別に分類したあと、あなたたちの決断で、合格を決めて欲しいの」
 質問に対して、太田黒が答える。
「と言うことは、合格、不合格は俺たち次第ってことになりませんか?それでいいんすか?」
「かまいません。あなた方が見所があると思われる人を積極的に採用してください」
 山口がきっぱりと答える。冒険者たちは互いに顔を見合わせて、考えていたが、最終的にはこの要求に応じることを決めた。
◆冒険者審査官
 戦士・・・中尾 智史、大島 めぐみ
 罠解除士・富田 剛、大塚 仁
 僧侶・・・佐々木 雅美、井上 真紀
 魔術師・・本田 仁、松島 明日香
 
【道:前田 法重・佐々木 雅美・本田 仁・中尾 智史】
「てか、戦士は何で俺じゃないの?」
 居酒屋『道』に準備してあったビールをすべて飲み干したあと、前田 法重は日本酒も飲みつくす勢いで飲みながらこう質問する。
「だって~前田さんは、ほら、ねえ」
 本田 仁が中尾 智史と目を合わせながら、韻を含む口ぶりでそういった。
「百歩譲って、俺は外れるにしても、原田がいるだろう?そこはどういうことや」
 「だって~原田さんは、ほら、ねえ」
 相変わらず同じ口調で本田は答えた。二人が言いたいことは良くわからない。恐らく言ってる本人たちも何がほら、ねえなのかは考えていない。
「前田さんと原田君はうちの重鎮ですから、依頼するのが気が引けたんじゃないですか?」
 前田に日本酒をつぎながら佐々木 雅美が答える。
「うーん、納得いかんなあ」
「まあまあ、前田さんを新人採用ごときに駆り立てることもないでしょう。われわれにおまかせください」
 そう言いながら、中尾は手酌をしようとお銚子をとったが、空になっていた。
「前田さん、まだ飲みますよね。じゃあ私が日本酒頼んできます」
 佐々木が立ち上がって、厨房にいるおばちゃんに日本酒をもらって来る。
「じゃあ、前田さんどうぞ」
 そういって佐々木は一升瓶と白色のマーカーを差し出した。
「うむ」
 前田はそういって、一升瓶になにやら描き始めた。それは某アニメのキャラクターらしいが、前田のお気に入りである。そしてその横に燦然と輝く”ガッシ“という文字。ちなみに、本日3回目であった。
 
【道:本田 仁・中尾 智史】
「本田さ~ん」
「ぐう」
「起きてくださいよ~」
「ぐうぐう」
 閉店になった後の『道』で中尾 智史は、眠ってしまった本田 仁を起こしていた。前田 法重は佐々木 雅美を家まで送るために一足先に帰っている。
「まったく、前田さんと同じペースで飲んだらヘタすりゃ命が危ないのに」
 そういって中尾は本田の肩を担いで店を後にした。

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