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1990年9月27日(木)

【勝烈亭:倉本 華・堺 すみれ】
「うーん、久々ー。やっぱり勝烈亭は美味しいわー」
「美味しいのは否定しないけど」
 満面の笑顔でトンカツを頬張っている堺 すみれを見つめながら倉本 華は苦笑しながら返事を返した。ここは通町筋電停近くにある大劇ビル2階のレストラン『勝烈亭』。お昼の時間でもあり、店内はたくさんの客で賑わっている。倉本と堺も先程運ばれてきたヒレカツ定食に舌鼓を打ちながら食している最中だ。高校の同級生であり、友人だった倉本と堺であるが、堺は県外の大学に進学しているので、普段は一緒に遊べるような状況ではない。だが今回堺が家庭事情で熊本に帰省して来たので一緒に街に出てきてランチを食べることにしたのである。堺は『勝烈亭』の大ファンであり、熊本に帰って来た時には必ずと言って良いほどここで食事を取っている。その際はほとんど倉本を誘っているので、結果『勝烈亭』に来るときはいつも倉本と一緒ということになるのだ。
「何?勝烈亭に文句があるの?」
 少し違和感を感じた返事に対して堺が質問をする。それに対して倉本は少し考えて返事を返した。
「いや、私も勝烈亭好きだから文句があるわけじゃないんだけど、一応若い女性2人がランチを食べるのがいつも勝烈亭ってどうなんだろうと思っただけ」
 素朴な意見に対して、言いたいことは何となく納得する。ただ、やはり定期的に『勝烈亭』のカツを食べたいのは確かなので、納得はしたものの今後の会食も『勝烈亭』から変わることはなかったのであった。

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