2004年6月21日(月)
【僧侶鍛錬場:今津 日花里・井上 尚人】
「やっと出来たー」
「おー井上くんおめー」
手のひらの上にやっと出現した桃色の光球を見つめながら井上 尚人が安堵の言葉を漏らし、それに気づいた今津 日花里が祝福の言葉を述べた。ここは午前中の僧侶鍛錬場。本日もたくさんの僧侶が鍛錬を行っている。今津と井上は現在2人だけ残っている26期の僧侶であり、お互い探索がない日はこのように一緒に鍛錬を行っている。同じ26期とはいえ、僧侶としての実力は今津の方がかなり上であり、今までも課題クリアはまず今津がクリアして、その後しばらくしてから胃の上がクリアするという状況であった。今回の桃色の光球発言も、今津は2週間ほど前にすでに成功しており、自身は虹色の光球発現に挑戦しつつも、井上の桃色光球発言のサポートをしていたのである。
「これでまた同じ課題の鍛錬になるね」
「虹色の光球だよね。次は負けへんで!って言いたいところだけど勝てる気がしない」
ニコッと笑いながら今津が発した言葉に対して、井上は苦笑いしながら本心を述べる。もちろん同期なのでライバル心がないことはないが、今までの課題は全て今津が自分よりも圧倒的に早く習得しているのである。今からこの差をひっくる返すのは並大抵のことではないと考えているのである。
「でもまあ、早く習得すれば良いって物でもないからね」
僧侶の光球などというものは、基本的には前衛の戦士の補助的役割であり、部隊の探索進度によって、必要とされる重要度が変化する。例えば今の段階で虹の光球が出現できたとして、それは別に白色球で代用できるものではあるし、桃色球にしてもないならないでなんとかなるものではある。そのことを今津が軽く呟いたので、それを聞いた井上はあいかわらず苦笑を浮かべたまま、軽く頷きを返したのである。