1991年4月11日(木)
【法学部:林 典子・菊池 駿・坂上 凛】
「あ、駿ー。ご飯今からだったら一緒に行こう」
「うーい」
大声で声をかけてきた林 典子の声を聞いて、菊池 駿は右手を挙げながらなんとも言えない返事を返した。ここは『法学部棟』。本日から1回生の講義がスタートしており、たった今2限目の講義が終わったのでたくさんの1回生たちが講義室から退出している。ガイダンスの時に仲良くなった坂上 凛と一緒に廊下を歩いていた林が、おそらく同じ講義を受けていたであろう菊池の姿に気づいて声をかけたのである。林と菊池は同じ第二高校出身であり、3年間同じクラスだったので非常に仲良くしているのだ。
「あ、勝手に友達に声かけたけど大丈夫だった?」
「私は大丈夫だよー」
一緒に坂上がいることを失念していた林だが、問題ないということなので、菊池と合流する。
「えっと、同じクラスで仲良くなった坂上さん。そしてこっちが同じ高校出身の菊池くん」
「初めまして坂上です。よろしくね」
「菊池です。よろしく」
簡単な挨拶を交わした後で3人は一緒に『生協』に向かう。たくさんの人でごった返していたが、座れないほどではないので、食事を購入して席に座った。
「ところで駿はどうするの冒険者」
「申し込むよ。熊大受かったからね」
高校時代から話題にしていた冒険者について林が質問し、それに菊池が答える。お互いに熊大に合格したらやってみようかと話していたのである。
「じゃあ私も申し込むねー」
こう言いながら林は購入したサンドウィッチを口に運ぶ。どうやら2人とも冒険者に申し込むようだ。
「凛は冒険者に興味ないの?」
今の話に全く反応していなかった坂上に林が質問する。すると少し考えて口を開いた。
「興味ないことはないけど、ちょっと他にやることがあるから申し込むのは無理かな」
「そっか、残念」
正直な気持ちを発した坂上の言葉を聞いて、林と菊池が同じ言葉を同時に漏らしたのであった。