1990年5月21日(月)
【熊大迷宮:黒髪てへろく部隊】
「君が前田くんかねー、さあかかって来なさい」
「何かムカつく」
出現したブッチャーが笑顔を浮かべながらこのセリフを発したのを聞いて、前田 法重が思わず言葉を漏らした。ここは熊大迷宮。黒髪てへろく部隊は本日もブッチャーの部屋を訪れている。ある程度のレベルに達するとブッチャーは戦闘を回避するというのが定説になっており、現状唯一ブッチャーをクリアしている右田 良子によると、これ以外のセリフを唱えた後で、ブッチャーが消滅するとの話である。本日前田は2回目のブッチャー戦であるが、川崎 志郎と原田 公司の1戦目も同じセリフを吐かれているのである。
「うーん。まだ前田さんもクリアできないですか」
「意外と攻撃喰らってるもんな」
後方でブッチャーと前田が戦っているのを見ながら富田 剛が言葉を発し、それを聞いて大石 泰造が意見を述べる。前田は避ける人の中でも特殊型であり、攻撃をすることで避けるという一見何を言っているのかわからないような戦闘スタイルを取っている。なので素人目には敵の攻撃を喰らっているかどうかの判断がつきにくいが、戦闘後に回復を行う大石からすると、結構ダメージを喰らっているのがわかるのである。そうこうしているうちに前田は無事にブッチャーを倒し終えた。
「物質回収します」
「回復するぞー」
戦闘終了に合わせて富田が物質回収に向かい、戻ってくる前田に大石が声をかけた。この後、回収と回復が終わった後で、川崎が2回目の挑戦を行う。
「君が川崎くんかねー、さあかかって来なさい」
いつものように出現したブッチャーに対して特に反応を見せず、大きく息を吐いた後で剣を構えた川崎であった。
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