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1991年4月17日(水)

【罠解除士鍛錬場:森 瑠美・真田 美和・山村 静香・扇 開次】
「そう言えば最近鍛錬場で富田君見ないわね」
 鍛錬を一旦休憩し、椅子に座ってドリンクを飲んでいた森 瑠美が思い出したように言葉を発した。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日も多くの罠解除士が鍛錬を行なっている。今日も早い時間から真田 美和といっしょに鍛錬を行なっていたが、途中からやって来た山村 静香、扇 開次も一緒に鍛錬を行なっている。あまり気にはならなかったが、ふと最近富田の姿を見ないので、思わず言葉を漏らしたのである。
「確かにあまり見ないですね。探索は月曜日だからそれ以外の日は居てもいいはずですけどね」
「それに富田君は救護部隊だから本来いないといけないはずなんだけどね。今日四谷君探索だし」
 扇の言葉に山村が続ける。救護制度があるので、探索している部隊が何かあった時のために、罠解除士は富田か四谷が必ずいつでも出撃できるようにしておかなければならない。なのに富田はなぜ居ないのだろうか。思案していると真田がお手洗いから戻ってくる。
「美和、富田君どこで何してるか知ってる?」
「富田君ですか?今は迷宮待機場にいますよ。何かあったら連絡するように言われてます」
 迷宮待機場、なぜそんなところに富田はいるのだろう。全く意味不明である。迷宮待機場は探索者が何かあった時のために魔術師が常駐する場所のはずである。みんなが憮然とした表情をしているのを察し、真田は説明を続けた。
「今日待機場で待機しているのが魔術師の多田隈さんで、多田隈さんが1人だと寂しいから一緒にいてあげるって言ってました」
「あら、優しいところあるのね。でも何で富田君なのかな。謎だわね」
 説明を聞いて森は感想を述べ、再度鍛錬を始めるべく立ち上がった。

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