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1990年11月15日(木)
【戦士鍛錬場:町田 康祐・谷口 竜一】
「じゃあちょっと休憩しますか」
軽く疲れた様子も見えるが、相変わらずの爽やかさを醸し出している町田 康祐が鍛錬相手の谷口 竜一に声をかける。この言葉に谷口は頷き、一緒にベンチの方へと歩いていく。ここは戦士鍛錬場。本日も多くの戦士が鍛錬を行なっている。町田は他の3期生と比較すると鍛錬にこれる日が少ない。医学部なのでそれもしかたがないことだが、来たところで鍛錬相手が中々見つからないというのもある。3期生で町田の鍛錬相手になってくれるのは今隣にいる谷口と、山村 三平太、姫村 ありさ、後藤 瑠衣ぐらいである。しかもこの4人の中でさえも町田が疲労感を感じられる鍛錬が行えるのは谷口ぐらいとなる。
「谷口いつも鍛錬してくれてありがとな」
「いやいや、こっちもすごく色々考えて鍛錬できるからすごく助かってるよ」
町田の言葉にこう返す谷口だが、実際3期で町田と互角に鍛錬できるのは自分しかおらず、その役目を自分が担わないといけないのは自覚している。谷口の相手は町田以外にもたくさんいることを考えれば谷口はあえて町田と鍛錬をする必要はない。ただ、そこを気づかせないようにするのは谷口の優しさである。
「ところで町田ってなんで冒険者になったの?」
普段から思っていた疑問を良い機会だから尋ねてみる。
「うーん。ちょっと一言では言えないかな。いろいろと複雑で。谷口は?」
「俺?俺はサークルの先輩とか同輩と一緒にやろうかってことで冒険者になった」
谷口は正直に自分が冒険者になった経緯を話したが、町田のは質問の答えになっていない。深く掘り下げて聞きたい気もしたが、その気持ちを抑えてそれ以上は聞かないことにした。