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1990年8月10日(金)

【熊大病院:深川 真・元木 美麗・砂川 憲剛】
「すいません。俺には全く状況がわかりません。ただ、いきなり目の前が真っ暗になって、気がついたらここに寝てました」
 ベットに横たわった状態で深川 真はこのように説明した。ここは熊大病院。ここにいるぞ!部隊の6名が運ばれた病院である。昨日一番重傷である古川 美穂以外は集中治療室から一般病棟に移り、面会も可能になったので面会に訪れたのである。
「わかったわ。とにかくまだしばらく入院になるけど、しっかり治して戻ってきてくれるのを待ってるわね」
 元木 美麗はこのように話して部屋を後にした。
 
【熊大病院:永田 健一・元木 美麗・砂川 憲剛】
「急に亜獣が現れて深川さんが殴られて倒れるのが見えて、混乱しつつも剣を構えたんですけど、次の瞬間意識が無くなりました」
 永田 健一も意識が戻り、当時の状況を思い出せるようになった。深川の言と同じように急に亜獣が現れたとの証言である。亜獣が近くにいたのを感知できていなかったのかもしれない。深川より症状の思い永田はそう口にした後、瞼を閉じて眠りについた。
 
【熊大病院:太田 喜美恵・元木 美麗・砂川 憲剛】
「右側の通路から急に亜獣が現れて、いきなり深川さんが倒されて、私もパニックになったんだと思います。それ以降の記憶がないです」
 当時の状況を思い出そうとする太田 喜美恵だが、パニックに陥った後の記憶が残ってはいない。迷宮での初めての戦闘が敵の奇襲となるとパニックになるなという方が無理である。とにかく体を安静にして、回復したら戻ってきてほしいと伝え、元木 美麗と砂川 憲剛は部屋を後にした。
 
【熊大病院:高村 翔・山口 可奈・加藤 愛奈】
「迷宮に入って、数体の亜獣の気配は確認できたので、一定範囲の亜獣は探知出来ていると考えていました。でも、いきなり出てきた亜獣に関しては探知が出来てなかったので、みんな準備が出来てなく、一方的に・・・」
 落ち込んだ表情で高村 翔がこのように口にした。病院で意識が回復し、当時の状況を思い出せるようになった後は、今回部隊が全滅した原因が自分にあるとずっと自分を責めてきたのである。
「高村くん。高村くんが考えているように今回部隊が全滅した原因は高村くんの気配探知ミスが大きいのは間違いないわ。ただ、気配探知を完全に行なっていても亜獣からの奇襲が100%ないとは言えないの。だから、本来は罠解除士が亜獣がいないと判断しても、特に戦士は常に奇襲には備えておかないといけない。ただ、これはある程度冒険に慣れてからわかることだから。今回はそれが初回の冒険で発生してしまったという事なの」
 正直このような状況が発生する可能性を山口 可奈は想定はしていたが、それを落とし込めていなかったことに関して自責の念がある。
「とにかく体を治して、もし復帰する気持ちになったらいつでも待ってるからね」
 そういって高村の肩を軽く叩いた後、山口と加藤 愛奈は病室を後にした。
 
【熊大病院:上村 静枝・太田黒 佳美】
「たぶん兎頭だと思います。急に右側から現れて来ました。たぶん6体。いきなり深川さんが倒されて、私は催眠を唱えようとしたけど、動揺してたのでうまく出来ませんでした。その後、永田くんと太田さんが兎頭に向かって行きましたが、敵わずに倒れて、高村さんもやられて、古川さんも・・・」
 恐ろしい表情を浮かべながら当時の状況を上村 静枝が思い出しながら口にする。太田黒 佳美は震えている上村を優しく抱擁する。震えていた上村は次第に震えが収まり、そのまま眠りについたので太田黒は布団を整えて病室を後にした。

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