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1991年7月1日(月)

【熊大迷宮:黒髪てへろく部隊】
「とりあえず周辺に亜獣はいないです」
 地下4階に到着してすぐに、富田 剛は周辺の状況を伝えた。ここは熊大迷宮地下4階。本日は今までの階段を使ったルートではなく、地下1階の暗黒空間の中にあるエレベーターを利用して地下4階まで降りてきた。降りてきて気づいたことは、おそらくこのエレベーターは地下4階までのものであること、エレベーターで降りてきた地下4階の空間が、先日階段から降りた地下4階よりも気持ち的な部分であるが、雰囲気が重いことである。
「前田さん。階段と同じように東西に通路が伸びてますね。どうします」
「まあ、どっちでもいいけど、何となく東に向かうか」
 原田 公司の言葉に前田 法重が答えて、全員で東方向へと向かう。通路は程なく行き止まりとなり、目の前には罠のかかったドアが存在している。
「では、罠外してみます」
「とみたん頑張れー」
 扉に近づいていく富田に多田隈 五月が応援の言葉を叫ぶ。しばらく罠と格闘している富田だったが、5分ほどして声を発する。
「解除できました。扉の向こうに亜獣はいません」
「よし、原田」
 状況を確認して前田が言葉を発しながら、原田に目配せしたので、いつものように扉を蹴破った。扉の奥はエレベーターが存在している。おそらく下に降りるものであろう。
「富田、確認して」
 前田の指示により富田はエレベーターを調べる。作りは地下1階から地下4階へ降りたものと同じようであるが、まだ下には降りれないようである。そのことを富田はゼスチャーで伝える。
「まあ、予想通りだな。じゃあ反対側に行ってみるか」
 部隊はエレベーターから離れ、元のエレベーターの場所に戻り、通路を西側へ進んでいく。西側を進むとこちらも行き止まりとなっており、目の前にドアが存在している。
「この扉は罠ないですね。奥に亜獣、6体です」
 富田の言を聞いて、前田は言葉を発さずに原田に目配せし、いつものように扉を蹴破った。扉の奥には3体のドラゴンと、2体の戦士、1体の僧侶がいた。
「無効」
「爆発」
 村田 健が僧侶に無効、多田隈がドラゴンに爆発を唱える。その後前田、原田、牛嶋 香織はドラゴンへと剣を向ける。ドラゴンの炎を警戒しつつ、前田、原田の順にドラゴンを倒すのに成功する。前田は牛嶋の加勢に入り、原田は戦士と僧侶に向かう。程なくして、亜獣の殲滅に成功した。
「物質回収します」
 富田が物質回収に入ったので、情況を確認する。ここは部屋ではなく通路のようであり、目の前に3つの扉がある。左右はすぐに行き止まりのようだ。
「回収終了。扉調べます」
 そう言って富田は右から順に扉を調べる。3つの扉とも罠があり、真ん中と左の扉の罠は解除が出来なかった。
「右だけ解除出来ました。扉の奥に亜獣はいないです」
 その声を聞いていつもの様に原田が扉を蹴破る。扉の奥は狭めの部屋になっており特に何もないようである。富田が壁を調べると扉から左側の壁に何かボタンみたいなものがあることに気付く。
「何かボタンがあるすよ」
 四角い形の多少大きめなボタンの前で富田が報告する。そのボタンをどうするかを全員で話し合ったが、とりあえず押してみることにした。
「では押します。一応警戒しておいてください」
 そう言って富田はボタンを押し込む。すると何やら5秒ほど不思議な感覚を覚え、それが終わると目の前に亜獣が出現していた。
「無効」
「爆発」
 現れた魔術師2体に村田が無効、ドラゴン3体に多田隈が爆発を唱える。
「行くぞ」
 ある程度警戒していた前田と原田、牛嶋は反応良く戦闘に入ることができ、まずは爆発で負傷しているドラゴンを難なく倒し、無効状態の魔術師も瞬殺した。
「物質回収します」
 富田が物質を回収する間に、今の状況についての確認を行う。ボタンを押すと、何か不思議な感覚を覚え、目の前に亜獣が現れる。不思議な感覚については何か体に悪い影響があるかどうは今はわからない。ただ、ボタンを押して亜獣が現れるのであれば、レア物質収集だけを考えれば歩き回らなくて良い分楽かもしれない。この部屋の意図はそういうことではないだろうかと結論付ける。この後、ボタンを3回ほど押し、亜獣と3戦したあたりで多田隈が疲労困憊になったので、本日の探索を終えることにした。

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