1990年8月24日(金)
【魔術師鍛錬場:菊川 竜二・藤原 静音・多田隈 五月。太田黒 佳美】
「うわ、びっくりした。こんな風になるんだ。」
目の前で光球が爆発するのを見て菊川 竜二がこのように口にした。午前中の魔術師鍛錬場。光球の爆発の鍛錬を一緒に行っていた菊川、藤原 静音、多田隈 五月であるが、本日菊川の目の前に藤原が発現させていた光球が爆発したのである。最近一緒に鍛錬する時にはお互いの目の前に光球を発現させて鍛錬を行っているのだ。
「静音さんおめー。やっぱり先を越されました」
藤原に抱きつく勢いで、多田隈が祝福する。当の藤原は大きなため息をついて、その後口を開く。
「めいちゃんありがとう。やっとクリアできたけど、何か思っていたのと違う。爆発させるって感じじゃないんだよね」
そういって藤原は再度光球を発現させて、すぐさま爆発させた。一度コツがわかったので、簡単に行えるようになったようだ。
「藤原さん。爆発できるようになったのね。おめでとう」
そう言いながら太田黒 佳美が近づいてきて藤原を祝福する。その後、太田黒は鍛錬を行っている魔術師を一か所に集めた。
「皆様、先程藤原さんが爆発の鍛錬をクリアしました。と言うことで新しい課題を発表します」
にっこりと微笑んで太田黒がこのように述べ、魔術師達は真剣な表情で話を聞く。
「課題は3つです。1つは爆発の課題の発展形で、爆発した光球の破片をさらに爆発させてください。イメージ的には爆発の威力が増す感じになります」
爆発すらできない魔術師達には途方に暮れるような話だが、いずれできるようになると強い気持ちを持つしかない。
「2つ目は目の前の空間の温度を下げてください。この鍛錬場で3度ほど下げれるようになれば迷宮で吹雪が起こせます」
何を言っているのか理解ができないような内容の課題を出されて、魔術師達はお互いに顔を見合わせる。
「最後は今行っている催眠の空間よりも広い空間をイメージして、その空間から特殊物質を消去してください。これができれば、あるレベル以下の亜獣は一掃することができます」
さらに難解な課題であるが、とにかくやるしかないという気持ちが魔術師達には浮かんでいる。
「爆発の課題に時間がかかっているように、この3つの課題もクリアするのはかなり難解です。時間がかかるとは思いますが、魔術師として強くなっていくには必要な能力となりますので、焦らずに鍛錬を続けてください」
1人ひとりの目を見ながら、真剣な表情でこう話した太田黒は、話し終えた後で満面の笑顔を浮かべた。
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