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1991年7月26日(金)

【六文銭:広巡 聡・山村 三平太・宮川 勘太・沢田 楓・黒澤 祭】
「えー、宮川さん火の国祭り出てるんですか?」
「うん。毎年出てるよ。今年は残念ながら中止だけどね」
 びっくりした表情を浮かべながら大声で叫んだ黒澤 祭の質問に対して、落ち着いた雰囲気で宮川 勘太が答えた。ここは居酒屋『六文銭』。本日も昼過ぎあたりから広巡の家でゲームを楽しみ、夜になったので『六文銭』にやってきたのである。黒澤は小さい頃から祭りが大好きであり、地元の盆踊り大会などは率先して参加していた。熊大に入学し、熊本の祭りを調べると、火の国祭りとボシタ祭りという2大祭りがあることがわかる。何とかして参加したいといろいろ調べていたが、実際に参加している人が目の前にいるのである。
「なんか俺の地区で昔から団体作ってて、高校1年の時から総踊りには参加してる」
 そう話す宮川の顔をキラキラした瞳で黒澤がみ見つめている。
「あのー、その団体って気軽に入ることが出来たりはしないですよねえ?」
 恐るおそる黒澤が尋ねる。
「何?黒澤さん参加したいの?」
「はい!」
 すごく元気な声で黒澤が返事をしたので、思わず宮川は笑ってしまう。
「入りたければ入れるよ。ただ、行事とか練習とか結構あって、全部参加出来るようじゃないと難しいよ。その辺りは大丈夫?」
「大丈夫です!」
 宮川が言い終わる前に黒澤が全力で返事を返す。
「わかった。じゃあ参加希望がいることは伝えておくよ。で、さっきも言ったけど今年火の国祭り中止なんだよね。普賢岳が噴火したから。だから実際参加出来るのは来年になるよ」
 その言葉を聞きながら満面の笑顔で頷く黒澤からビールを注いでもらい、宮川はそれを一気に飲み干した。

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