1990年1月26日(金)
【ゼーレ本部:足立 賢治】
「現在1期生の中で3部隊が迷宮探索を開始しております。1階探索においては全く問題ないようです。今後冒険者達の成長度合いによってより深い階層に探索が進められていく予定となっております」
ゼーレ本部の会議室。急な連絡によって呼び出された足立 賢治が相変わらず1人で座っており、スピーカーの向こう側にいると思われる理事達に冒険者組織の現状を説明する。それにしてもいつからこのような報告方法になっていたのだろうか。以前はこの会議室に理事長達も参加し、報告を行なっていたが、いつの間にか自分1人だけがこの会議室を訪れてスピーカーの向こう側の理事と相対している。足立は記憶を辿ってみたが、その部分の記憶が欠落しているようで全く思い出せない。
「足立君。報告ありがとう。現在冒険者組織の運営に問題がない点理解した。今の流れで継続して運営を頼む」
スピーカーの向こう側から理事長①の渋めの声が聞こえてくる。理事長①は話を続ける。
「それから冒険者組織の秘匿性についてだが、ようやく関係各所との調整が終了した。なので、只今より冒険者組織の秘匿性を解除する。今後は積極的に広報活動を行なってもいいし、もちろん2期生の募集には内容等全て公開して構わない」
「了解しました」
足立は感情を込めずに静かにこう呟いたが秘匿性の解除については冒険者組織にとって色々な面でプラスである。特に2期生の募集担当である山口 可奈と太田黒 佳美の歓喜する顔が浮かび、ほんの少しであるが、足立の顔にも笑顔が浮かんだ。