1991年2月2日(土)
【ゼーレ本部:加藤 愛奈・富田 剛・佐々木 雅美】
「いやー、なかなかイメージが湧きませんね」
「まだ始めたばかりだし、早々は出来ないわよ」
今行っている業務の進捗を富田 剛が報告した後で、加藤 愛奈が感想を述べる。ここはゼーレ本部。本日も富田はゼーレ本部内である業務を行っていた。先日加藤から相談を受けた件であるが、やる事が漠然としているので、富田も手探りの状況でいろいろ試している。ただ、スタートの状況とゴールの状況はわかっているので後はその間をどうするかという話しである。
「加藤さん、お昼どうします?一緒にどうですか」
「ごめん。富田君。私ちょっと用があって街に行かないといけないの」
「了解です。市電で行きますかね?じゃあ味噌天神まで一緒に行きましょう」
食事の誘いを断られたことで少し悲しみの富田であったが、気持ちを切り替えて味噌天神まで一緒に歩くことにした。
「あ、加藤さん。お疲れ様です。」
道の反対側から加藤を呼ぶ声が聞こえ、そちらを向くと佐々木 雅美がこちらに向かって歩いてきている。
「佐々木さん。お疲れ様。どうしたの?こんなところで。」
「薬学部の友達にランチに誘われたので、その友達の家に向かう所なんです。」
僧侶長官の加藤と僧侶の佐々木はもちろん知り合いであるので、このような会話は自然と起こる。ところで、ここで富田に疑問が巻き起こる。富田はもちろん美人である佐々木のことは知っているのだが、佐々木は自分のことを知っているのだろうか。この人は誰だろうとか思われてないだろうか。富田が不安げな表情を浮かべていると佐々木に声をかけられる。
「あ、遅くなったけど富田君もお疲れ様。加藤さんと一緒だなんて珍しいわね」
「佐々木さんに名前を覚えていただいているとはこのランズベルク伯アルフレッド感嘆の極み」
非常に満足げな表情を浮かべてこのように答えた富田に加藤と佐々木はなんとも言えない表情を浮かべていた。