1990年6月20日(水)
【戦士鍛錬場】
「あ、元木さん、どうされました」
2期の鍛錬を指導していた元木 美麗が自分に近づいて来たので川崎 志郎は声をかける。午前中の戦士鍛錬場。本日も2期全員と1期もかなりの人数が鍛錬場に訪れている。川崎は前田 法重、村川 慎太郎、原田 公司と一緒に鍛錬を行なっており、休憩のために椅子を座って飲み物を飲んでいるところだった。
「川崎君。お疲れ。手が空いた時でいいから良かったら2期の何人かに指導して欲しくて。何人か伸び悩んでいるので」
多少済まなそうな顔をして元木がこう説明する。1期の合格前に同じことを言われた川崎は特に驚きはしない。
「いいですよ。対象者を教えてください」
特に悩むこともせずに川崎は即答する。前にもやったことがあるし、指導するのは特に嫌いではない。
「ごめんね。川崎君にしか頼めなくて」
再度済まなそうな表情で元木がこのように発言する。その言葉を聞いて前田が声をかける。
「何なら俺やりましょうか」
「え、あ、前田君はちょっと・・・」
元木は少し困った顔をしている。
「何なら俺やりましょうか」
「え、あ、村川君はちょっと・・・」
「何なら俺やりましょうか」
「原田君は違うわよね・・・」
「何なら俺やりましょうか」
「あなたはもっと自分の鍛錬を真面目にやりなさい」
たまたま近くを通っていたら面白いやり取りをやっていたので、意を決してそれに入っていった渕上 幸太郎は元木に厳しく叱咤された。