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1990年5月17日(木)

【魔術師鍛錬場】
「あれ、意外と早くにやっと出た。ヤットデタマンブギウギイェヘー」
 手のひらに発現した光を見て吉川 元気がまたもやヤットデタマンのエンディングを口ずさんだ。午前中の僧侶鍛錬場、本日は2期生全員と藤原 静音、多田隈 五月、河本 多喜二が鍛錬を行なっている。朝一番の太田黒 佳美の話で昨日僧侶で1名課題をクリアしたと聞いていたので、2期の魔術師達はいつも以上に気合を入れて鍛錬を行なっていたが、まさか自分が一番早く成功するとは思ってなかったので、吉川自身が一番驚いている。
「すげー、吉川おめー」
 吉川の手のひらの光に最初に気づいた黒田 颯太がまず祝福の声をあげ、上村 静枝、江村 香奈恵、潘 小百合も順番に祝福した。2期生達の一連の流れを見ていた太田黒は流れが落ち着いたタイミングで2期生達に口を開く。
「吉川君。クリアおめでとう。最後方から捲ったわね。すごいわ。ところで吉川君が手のひらの課題クリアしたので次の課題を発表します。実際見てもらうのでちょっと待ってね」
 そういって太田黒は視界に入った多田隈に手招きする。それに気づいた多田隈が太田黒のところにやってきた。
「太田黒さんどうしました」
 多田隈は、2期生たちに軽くお辞儀をした後、呼ばれた理由を確認する。すると、太田黒からその理由を教えられた。それならと多田隈は2期生の前で手のひらの課題の次の課題について実際に見せることにする。多田隈が前方に視線を送ると、2期生達のちょうど真ん中あたりに光球が発現した。これを見て2期生達は驚きの声をあげる。もう一つの課題である空間の歪みも一応やってはみたが、2期生達には何をやっているかは今のところ理解できないであろう。この2点を行なった多田隈は2期生達に礼をして、元々鍛錬をしていた場所に戻っていった。
「1つ目は分かりやすかったと思いますが、手のひらに発現させた光と同じものを空間に発現させると言うものです。あともう1つはわからなかったと思いますが、あなた達がいる空間全体にいま歪みが発生していました。この目の前の空間に歪みを発生させると言うのが2つ目の課題です。この2つは迷宮探索までにクリア必須ですので、各自集中して鍛錬をお願いします」
 そういって太田黒は魔術師達全員に目配せし、その後魔術師達は各々鍛錬を再開した。

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