1990年8月8日(水)
【罠解除士鍛錬場:四谷 謙詞・木下 真子・富田 剛】
「やっぱりちょっとまだ弱い気がする」
木下 真子の気配探知を見て四谷 謙詞がこう口にした。午前中の罠解除士鍛錬場。本日は四谷が木下の鍛錬を指導している。先日のここにいるぞ!部隊の全滅の後、山口 可奈から依頼されたからだ。ただ、四谷も人に指導できるほど気配探知を極めているわけでない。1期生ではできる方だというだけである。
「ちょっと休憩しようか」
四谷が木下に声をかけて、一旦休憩することにした。2人は各々椅子に座り、水分を補給する。
「結論的にいうと、木下さんの気配探知では完全に亜獣を探知できないかもしれない。余程戦士が強靭であれば別だけど、今の状態で探索を行うのは危険だと思う」
分析した内容を四谷が木下に伝える。木下は自分でも気配探知が足りないことは理解していたので、その言葉を素直に飲み込む。ただ、どうすれば成長できるのだろうかとの疑問が湧く。
「参考にならないかもしれないけど富田君にも聞いてみようか」
そういって席を立った四谷は富田 剛を連れてきた。富田は本日罠解除装置のレベル3をクリアして上機嫌である。
「気配探知のコツねえ。多分人それぞれやり方は違うと思うけど、要は集中力だからね」
木下の悩みに対して富田は自分なりの考えを述べる。
「好きな人のことを思ったり、好きな食べ物のことを考えたり、あとは素数を数えるとか何かしら自分が一番集中できる事を見つけると良いと思う」
「ちなみに富田君はどうやって集中してるの」
疑問に思ったことを木下が尋ねる。
「俺?俺はいつもクルーンに玉が回っているのを頭に浮かべてる。右奥!って思いながら」
クルーンの意味がよくわからない木下と四谷だったが、富田のことだからおそらくギャンブルの何かだろうとは察した。
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