1990年6月30日(土)
【森の小径:右田 良子・佐々木 雅美・判 祐一】
「ふーん、雅美まだ決めてないんだ」
紅茶をスプーンでかき混ぜながら右田 良子はこう口にした。午後1時を過ぎた『森の小径』、右田と佐々木 雅美、判 祐市はいつものように本日のパスタを食した後のティータイムを楽しんでいる。3人とも4回生なので、来年の3月には熊大卒業となる。卒業後の進路について右田が佐々木に尋ねたのである。
「最初は普通に教員採用試験受けて卒業したら冒険者やめて、夢だった先生になろうと思ってたけど、まだ冒険者も全然さわりしかやってないので、それも何か悔しい気がするのよね」
ため息をつきながら佐々木がこう答えるのを右田は真剣な表情で聞いている。
「まあ、祐市みたいに院に進むならともかく、熊大卒業した後、冒険者だけ続けられるかどうかもまだはっきり聞いてないしね。まあ大丈夫だとは思うけど」
そういって右田はティーカップを口に運ぶ。右田はもともと大学を卒業した後、判が2年間院に行く間教職として働き、判が院を卒業したら一緒に黒川温泉に戻る予定だった。だが、今の右田の気持ちはその2年間冒険者として探索を進めたい気持ちで満たされている。
「私と祐市は少なくとも後2年はいるから出来れば雅美にもいて欲しいけど、流石にそこまでは強要できないからね。でもいて欲しい気持ちは本当よ」
真剣な眼差しで自分を見つめる右田の視線に悩みが倍増する佐々木である。
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