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1991年8月30日(金)

【冒険者組織会議室:大野 賢太・柏原 隆一郎・佐々木 雫・山村 静香・久米 直樹・江村 香奈恵】
「いや、予想はしていたから大丈夫だよ。気にしないで」
 隊長の大野 賢太が優しい表情を浮かべて言葉を発する。ここは冒険者組織2階会議室。悪魔の花嫁部隊の隊員達は来週から探索が始まるのを受けて、冒険者継続意思を確認するために集まったのである。小室ファミリー部隊の全滅時に重傷を負い、今も入院中の扇 開次の幼馴染であり、この1ヶ月ほとんど鍛錬場に現れなかった山村 静香が冒険者を続けることをやめる決意をしたのである。
「ギリギリまではっきりしなくてごめんなさい。私もかなり迷ったんだけどね」
 そう言いながら、何か悔しそうな表情を浮かべる。山村は冒険者組織のことを知ってからは冒険者になりたいとずっと思っており、あまり乗り気ではなかった扇を誘って2期生として入所した。なので本来としては冒険者を継続したいが、自分が誘ったせいで今現在入院している扇のことを思うと、自分だけ冒険者を続けるということはできないと判断したのである。
「まあ、引退ってわけじゃなくてもまた戻ってきてもいいわけだし。俺たちは他の部隊から罠解除士借りて探索は続けるから」
「もし、戻って来るならまた一緒に探索すればいいよ」
 柏原 隆一郎の言葉に江村 香奈恵も感想を述べる。優しい言葉をかけてくれる隊員達に心を打たれて、山村は嬉しい気持ちと悔しい気持ちが入り混じった感情となり、ボロボロと泣き始めた。

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