1989年12月17日(日)
【ル・ミディ:村田 健・牛嶋 香織・多田隈 五月】
「まあ彼氏がいればいるで大変だよね」
紅茶を口に運びながら牛嶋 香織がこう言葉を発した。ここは喫茶店『ル・ミディ』。お昼過ぎの時間であり、店内はまったりとした雰囲気が漂っている。本日も散歩の途中で昼食を食べにきた村田 健だったが、ちょうど食べ終わったぐらいの時間で牛嶋 香織と多田隈 五月がやってきたので、そのままここに残ることにしたのである。牛嶋と多田隈は昼食はもう食べたらしく、デザートと飲み物を注文した。実は特に来る予定は無かったのだが、たまたま前を通って店内を見たら村田がいるのが見えたので、寄ることにしたのである。最近牛嶋と多田隈は一緒にいることが多く、年上の牛嶋は多田隈の恋愛相談に対して親身に話を聞いてあげているのである。また、その場所に村田も居合わせることが多いので、自分も内容的にはかなり詳しく知るようになっているのだ。今日も多田隈の彼氏不満トークは絶好調であり、それに対して優しく牛嶋が嗜める状況が続いている。文句は言っているが多田隈は彼氏のことが大好きであり、自分が思っているような恋愛が出来ていない不満を他の人に聞いて欲しいだけなのだ。
「少しスッキリしました。香織さんありがとうございます」
笑顔を浮かべて多田隈がこう口にしたので、牛嶋も笑顔を浮かべ、村田は何も言わずにコーヒーを口に運んだ。