望郷
みなさん、こんにちは。
こちらの企画に参加しています。
小牧さん、いつもお世話になります💞
よろしくお願いいたします😊🙏💓
夕焼けは、いつも海の方からやってきた。
私の故郷では、茜色の空はどこか潮の香りがする。
夕焼け小焼けの赤とんぼ〜♫
決まった時間に町内放送がかかっていた。
その音楽は、『さよなら』の合図だ。
「ばいば〜い!」
「またあしたね〜!」
そんなふうに友達と別れて、家へ走って帰った。
私は4人兄弟だ。
兄を筆頭に年子の家で、母の口癖の一つが、
『お家の外で遊びなさい。』
だった。
父は転勤族で、みんな生まれたところは違う。
それくらい引っ越しが多く、親戚は遠くにいたが、兄弟の年が近いからか、不思議と寂しさは感じなかった。
私は兄が大好きで、小さい頃は、
「ついてくるな!」
と邪険にされながらも、必死であとをついて行っていた。
それもどこかでまかれて、一人で泣きながら家に帰っていた。
春には一面のレンゲ畑で、近所の子らと一緒に、レンゲの花冠や首環を作って遊んだ。
そうして遊び疲れて、しばしの間、レンゲ畑の上に寝転がる。
空を見上げた。
耳元で虫の羽音がする。
空は青く、雲は白く輝いていた。
汗と草の香りがたっている。
毎日が冒険だ。
満ち足りた日々。
夕方になると、夕焼けが美しく、
『暗くなる前に家に帰る』
が決まり事の家。
もう戻ってはこない幼い日。
日々の生活に一生懸命な、嘘偽りのない時間がそこにはあった。
それが今、無性に懐かしい。
見栄も外聞もなく、どろんこになってもへっちゃらで、水たまりの水を長靴で踏んづけては飛ばして笑っていた。
雨上がりの草の上は、太陽の光を浴びて、キラキラと輝いていた。
どんなものより美しかった。
きっと私の瞳も、この世の神秘を探求しようと、輝いていたことだろう。
夕焼けの空にカラスが飛んでいく。
黒い影が時に大群になって…
今、私の住む地域でカラスは、子供の頃に童謡で聞いたような風情ではなく、もっぱらゴミステーションを餌場にする厄介者だ。
人もカラスも暮らしにくい世の中になってしまったのかもしれない。
子供たちが巣立ちつつある今、少し身軽になるのがいいのかもしれない。
長年溜まってしまった荷物だけでなく、精神的にも身軽に生きてみようか。
見栄やプライドは捨てて、本当に必要なものを見分ける知恵ぐらいは持っていたい。