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「北風の賦」まえがき

 この小説は、現在の神戸港に当たる、兵庫津ひょうごのつを舞台にしています。
 その地には、南北朝時代以来、「北風きたかぜ家」という商家がありました。
 明治維新に至って、その財力で大いに尊攘の志士を助けたものの、ついには身代を傾け、倒産・絶家してしまったといいます。
 しかし初めから商人だったわけではなく、そもそも武士として立身し、それに挫折したことで、やむなく商売を始めた、ということのようです。
 室町時代の半ばに、北風家は二流に分かれました。
 一方は「嫡家」、もう一方は「宗家」を名乗り、相当激しく対立していたようです。
 しかし、その二流の北風が、全てを失うことで、再び手を取り合うきっかけになった出来事があります。
 それが天正六年の「荒木村重の乱」です。
 この作品が一人でも多くの方の目に触れれば、これ以上の幸せはありません。
 どうぞよろしくお願いします。

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