「花、散りなばと」経覚という人、古市という場所について
この小説は、室町時代の奈良を舞台にしています。
主人公は、大乗院門跡の経覚。
彼は摂関九条家の生まれで、関白の子です。
当時の習いとして、十代から奈良興福寺に入り、わずか数年で大乗院門主、三十歳そこそこで興福寺別当(寺院のトップ)となりました。
実質的な大和国の王であって、貴種ならではの出世コースです。
その割に彼はかなり破天荒というか、自由闊達な性格だったように思われます。
興福寺に何の縁もない天竺人の子孫を弟子に取るなど、そのすさまじい闘争心もあいまって、